十六夜の月はためらいながら夜空へ

中秋の名月を前に月の古典をいろいろ調べていたら、
満月の翌日の十六夜にまつわる認識がおもしろかった。

十六夜は「いざよい」と読む。
これにまつわる目に止まった古典を2つ引用すると。

まずは源氏物語の夕顔より。

いさよふ月に、ゆくりなくあくがれむことを、女は思ひやすらひ、とかくのたまふほど、にはかに雲隠れて、明け行く空いとをかし。

迷っている月のように、女が外出に戸惑っているうちに、
急に月が雲に隠れてしまい、明け行く時の空はとても美しい。

続いて古今和歌集よりよみ人しらずの和歌(690) 。

君や来む われや行かむの いさよひに
真木の板戸も ささず寝にけり

あなたが来るだろうか。私の方から行こうか。
そうためらっているうちに、十六夜の月が出て、
真木の板戸を閉ざさずに寝むってしまったよ。

十六夜の月の出は十五夜よりも30分ほど遅くなる。
それを当時の人々は十五夜に遠慮して、ためらっていると見立てた。
だから古語で「いざよふ」といえば「ためらう」ことを表している。