モンテーニュは「三つの交際について」の章で、
人生を振り返り、3種類の良き交際を比較した。
- 美しく礼儀正しい女性たちとの交際
- まれで心地よい友愛
- 書物との交際
まずは読書以外の2つ(恋愛・友愛)について、
「こうした二つの交際は、偶然的な要素が大きいし、どうしても、相手次第というところがある。それに、いっぽうは悲しくなるほど稀なものだし、他方は年齢とともにしぼんでいく。このような次第であるから、この二つの交わりが、私の人生の必要を十分に満たしてくれたとは思えない。」
と前置きした上で、読書についてこう語る。
「書物との交際は、はるかに確実で、はるかに自分自身のものとなる交わりと言える。他の長所においては、最初の二つに劣るものの、変わることなく、手軽に奉仕してくれるという取り柄を有している。それは、わたしの人生行路において、いつでも脇に控えていて、どこにでも付いてきてくれる。」
人生において読書は「最高」の存在とは言い切れないが、
心を整えるという点においては「最強」の趣味と言える。
「わずらわしい思いを遠ざけるには、とにかく書物に助けを求めればいい。たちまち書物のほうに注意を向けてくれて、わずらわしい思いを追い払ってくれる。」
「書物が自分のかたわらにあって、好きなときに楽しみを与えてくれるのだと考えたり、あるいは、書物がどれほどわが人生の救いになっているのかを認識したりすることで、どれほどわたしの心が安らぎ、落ち着くのか、とてもことばでは言い表せないほどだ。これこそは、わが人生という旅路で見出した、最高の備えにほかならない。」
一人で作る幸福は決して裏切らないし、誰にも邪魔できない。
だから読書を通じて学ぶことが、強い心を育むのだ。
そして生き方の指針を「古典」と呼ばれる本から見出せたなら、
私たちが日々直面する悩みなど些細なことだと悟るだろう。
私たち人間の心の歴史をたどれば、
たくさんのことに悩み、苦しみながら新しい道を開いてきた。
この歴史の中で、読み継がれてきたのが「古典」なのだから。
多くの書物に触れることで、何かを学び続ければ、
その過程に小さな幸せを星の数ほど見つけられるはず。
そしてその星々を線でつないで星座をつくってゆく。
それが心の中に幸せをつくるための読書なのだ。
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