加速化するイノベーションという欺瞞/バーツラフ・シュミル「Invention and Innovation」

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「イノベーションは加速している」とよく言われているが、
過度な期待は禁物であると説いた本が興味深かったのでメモ。

失敗したイノベーションの3パターン

  • 歓迎されていたのに、迷惑な存在になった発明
  • 主流となるはずだったのに、当てが外れた発明
  • 待ちわびているのに、いまだに実現されない発明

歓迎されていたのに、迷惑な存在になった発明

  • 有鉛ガソリン…エンジンに負担をかけないガソリンとして導入されたが、排ガスに含まれる鉛が神経障害を引き起こした。
  • 合成殺虫剤DDT…当初は有効に見えたが、駆除対象外の動植物への悪影響が深刻で、駆除対象の昆虫は耐性を獲得してしまった。
  • フロンガス(クロロフルオロカーボン)…安価な冷媒として歓迎されたが、オゾン層を破壊することがわかった。

主流となるはずだったのに、当てが外れた発明

  • 飛行船…登場時は旅客輸送の手段として主流になると言われたが…
  • 原子力発電…大気汚染物質がゼロのエネルギーと期待されたが…
  • 超音速飛行…コンコルドで終わったと思いきや、現在も続けられている

待ちわびているのに、いまだに実現されない発明

  • 真空に近いチューブを通る高速列車
  • マメ科植物のように土壌に窒素を固定できる穀物
  • 核融合発電

加速化するイノベーション?それは誇張が過ぎる。

  1. あらゆる大きな進歩、広く普及した技術には、なにかしら懸念すべき点がある。当初は称賛ばかりされていて、望ましくない結果が明確でなくても、だいぶ時間が経ってから問題が浮上してくる場合がある。(有鉛ガソリンやフロンガス)
  2. 商用化を最優先にしたり、便利ではあるものの、あきらかに最善の技術ではないものを導入したりすると、長期的に見れば成功をもたらさない。(原子力潜水艦の原子炉)
  3. ある発明が最終的に受け入れられるか、社会に適合するか、商業的に成功するかは、その開発と商用可の初期段階では判断できない。(飛行船や超音速旅客機)
  4. その発明に極めて困難な課題が伴い、たとえ潤沢な資金を得て根気強く開発を続け、数十年の努力を重ねても成功する保証がないのであれば、懐疑的な態度をとるべきだ。(核融合)

1960年代以降のいわゆる「ムーアの法則」による半導体の進歩と、
様々なデバイスへの応用により、多くの分野で急激な成長が見られたため、
あたかもすべての分野で同様の成長をしているような思い込みがある。

実際には半導体が関わる分野以外、食料生産から長距離輸送に至るまで、
イノベーションが加速している証拠はいっさいない。

新しい発明に過剰な期待を寄せてはならない。
すでによく知られている信頼のおける手法・技術を、
根気よく広める方が短期間で価格の人が恩恵を受けられるはず。

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