渡辺京二「逝きし世の面影」

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これからの日本の立ち位置、どうするべき? どうしたら幸せ?
私が考えてどうなる話でもないけど、考えないといけないような切迫感。

日本はキャッチアップ戦略の国だから、そのうち中国を追いかけて復活?
そんな軽薄なのはイヤだ! 私の考えは、以前紹介した原研哉さんと同じ
ヨーロッパを追いかけて百数十年、アメリカを追いかけて約60年。
そして過去には、何百年も中国の背中をひたすら追い続けた時代もある。

でも唯一、日本が誰の背中も追わなかったのが、江戸時代。
私は日本が最も輝いていたのは、20世紀後半ではなく、この時代だと思う。
だから未来の日本を見つめるために、もっと江戸時代のことを知りたい。

そしてこの「逝きし世の面影」は、幕末・明治の外国人の証言をもとに、
世界に誇るべき過去が、日本にあったことを教えてくれる。
文中に数多く登場する、外国人の日本賞賛のなかで一番目を引いたのが、
日米修好通商条約を締結したタウンゼント・ハリスの証言。

これが恐らく人民の本当の幸福の姿というものだろう。私は時として、日本を開国して外国の影響を受けさせることが、果たしてこの人々の普遍的な幸福を増進する所以であるかどうか、疑わしくなる。私は質素と正直の黄金時代を、いずれの国におけるよりも多く日本において見出す。」P121

開国を要求した張本人が日本へ海外文明を持ち込むことを疑問視していた。
中学高校は日本史の授業では「開国」や「文明開化」という言葉とともに、
野蛮な日本が洗練されていくイメージを植え付けられたが、実は違ったのだ。

ちょっと分厚くて読むのが大変だけど(文庫サイズで約600ページ)、
私たちの日本観に新たな息吹を吹き込んでくれる素晴らしい逸品。
ここ3年で500冊近い本を読んだけど、そのベスト3に入れたい一冊。

逝きし世の面影 (平凡社ライブラリー)
平凡社
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コメント

  1. お薦め本コーナーを愛読する者 より:

    >ここ3年で500冊
    まろさんが薦めてくださる本は、当たりが多いなと感じていましたが、その秘密がついに分かりました。
    ぜひその500冊のなかのベスト3を教えてください。よろしくお願いします。

  2. まろ@管理人 より:

    去年ヒマだったんで253冊読んじゃったんですよ(←ちょっと自慢)
    ベスト3のうちあと2冊を選ぶとしたら、
    ・中野孝次「清貧の思想」
    ・羽生善治「決断力」
    です。
    私は読んで自分の考え方に革命が起きるような本が好きです。
    あと私が読んでいる本の一覧は、メディアマーカーで公開しています。
    http://mediamarker.net/u/stojkovic/