今春より18世紀以降の近現代史は日本史と世界史に分けず、
「歴史総合」という新しい科目で、高校の授業がされているらしい。
それに合わせた岩波新書のシリーズ本「歴史総合を学ぶ」の第一巻、
「世界史の考え方」が、とてつもなくおもしろかった。
1章ごとに3冊の歴史書を選んで、3人の歴史家が対話を進んでいく。
昨年「東大連続講義 歴史学の思考法」を読んだ時にも感じたが、
歴史を学ぶ意義は、その叙述の方法に触れることで、
自分なりの世界を読み解く方法を掴むためのヒントを得ることなのだろう。
以下は読書メモ。
-
日本の世界史解釈は現在の状況によって変わり続ける(戦後日本の復興と民主主義の定着から見た世界史と、冷戦体制の崩壊と世界の経済格差から見た世界史)
-
国家の発展モデルを追いかけるだけではなく、世界の構造が浮かび上がるような商品の物流を読み解く視点も大切。
-
産業革命との比較をたびたび見聞きするが、産業革命自体について詳しく理解しているだろうか?
-
日本史と比較理解が難しい「1848年の革命」を私たちはどう捉えるべきか?
-
これまでの世界史は各国史の寄せ集めとして国の発展を説明する叙述なっており、パワーゲームの記述に偏りがち。
-
結論のはっきりしない歴史書でも、豊富な事実が列挙されていれば、読者が歴史的事実を自分で解釈する余地があり、それはそれで独自の魅力がある。
-
近代日本は白人を頂点とする人種ヒエラルキーにおいて、劣等人種と位置づけられることを回避し続けたことで、人種意識に正面から向き合うことなく歴史を歩んでしまった。
-
アメリカの掲げていた「移民国家」はタテマエ。奴隷解放後は人種差別的な動きが強化されていった。
-
優生学が大きな影響力を持った19世紀末のアメリカで、優生学的断種や異人種間の結婚禁止の法律が作られ、それは後のナチス・ドイツのモデルになった。
-
日本の高度経済成長期、中東諸国は日本への原油輸出で獲得した資金で欧米から武器を輸入。日本の経済成長が中東の紛争が構造的につながっていた。
-
パレスチナ問題を考えることは、世界史を根本的に考え直す機会になる。国家同士の「戦争」を重視して世界史を読み解くと「内戦」や「対テロ対策」が見えにくくなってはいないか? 国民国家とは何なのか?
対話のもととなる15冊(3冊×全5章)の課題図書は、どれも文庫・新書サイズ。
しかも本書で分かりやすく読みどころが紹介されているので、
ここを起点に読書の幅を広げていけそうだ。
さて、そろそろ注文していた産業革命の本が届くはず。
コメント