2008年に読んだ「17歳のための世界と日本の見方」。
最初に手に取った松岡正剛さんの本はこれだったと思う。
タイトルが易しそうだったから、これを選んだのだが、
それまで触れたことのなかった歴史や文化の見方と出会い、
なんだこれは!と関連する本を読みたくなったのを覚えている。
十数年前に貼り付けた付箋やマーカーが残っているので、
その記録をたどってみると、なかなかおもしろい。
当時の私が興味を持ったと思われる部分を書き出すと、
- 生命は情報である。その情報の動的な組み合わせが「生きている」という状態をつくっている。
- 世界中の英雄伝説は一つの母系からできている、と突き止めたジョセフ・キャンベル。キャンベルの講義に刺激を受けたジョージ・ルーカスが「スター・ウォーズ」を制作。
- ゾロアスター教、ユダヤ教、イスラム教の一神教が生まれた地は砂漠。ちょっとした判断ミスが生死につながる厳しい自然環境では、判断を迷わせるような、たくさんの神々がいては困る。一方の多神教は湿潤で森林が多い地域で生まれている。
- イエスの活動期間はわずか5年。5年間のことを詳しく知っていたのはペテロ以下十数人の弟子だけ。でもそれで十分だった。何かを起こしたければ、まず「最初の十人」を作るべき。
- 紀貫之が編纂した「古今和歌集」に、漢文による序文と、ひらがなによる和語を駆使した序文の二通りが付けられている。漢文化と和文化を並列しながら、自在に扱うことができるようになった歴史的事件。
- グーテンベルクの活版印刷術。聖書を身近に手にできるようになったことで、ローマ教会へのありかたに疑問を持つ人が増え、やがて宗教改革へ。また活版印刷以降、人々は音読していた本を黙って読むようになった。
- 枯山水は小さな庭の空間の中に大きな山や川を表現するために、あえて石だけを使った。水を感じたいから水を抜く。何もないからこそ、想像力で大きな世界を見ることができる。何もないからこそ、最上の美を発見することができる。
一番衝撃だったのは紀貫之の話かな。
学生時代の日本史ではそんな習い方をしなかったから。
たぶんこの記述と出会わなかったら、好きな歴史上の偉人は?
と聞かれたら、戦国時代の武将を答える人生のままだっただろう。
- 紀貫之。日本語と季節感の原型を創った偉人。(23/01/20)
枯山水の話も印象深かった。
不足の美や未完の美、余白の美、あるいは、引き算の美学。
日本文化を捉えるための重要概念に触れたのはこれが最初だった。
もっと深く知りたくなり、禅や茶道に関心が広がっていった。
- 幽玄(有限)の中に無限の美を見る(11/06/26)
- 岡倉天心「茶の本」を「不完全の美」で要約・編集(12/12/08)
- 手の中に宇宙を…利休の引き算の美学。(13/01/24)
- 禅芸術の引き算の美学。その精神性の背景は?(17/09/18)
- 夢窓国師が枯山水の祖とされるのはなぜか?/夢中問答集57話(17/10/24)
松岡さんはあらゆる分野へ足を踏み入れていく方だったので、
各分野の専門知識を持つ方から、批判されることも多かったように思う。
でも読書好きにとっては、好奇心を掻き立ててくれる最高の存在だった。
この人を追いかけていれば、新しい発見がありそう!って期待感。
30歳の時にそんな存在に出会えて幸運だったなぁとしみじみ思う。
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