数学は好き嫌いで済まされるレベルの道具ではない。
宇宙の原理は数学という言語で記述されている(ガリレオ・ガリレイ)
数学の不合理なまでの有効性(ユージン・ウイグナー)
経験とは独立した思考の産物であるはずの数学が、物理的実在とこれほどうまく合致するのはなぜか?(アルベルト・アインシュタイン)
というわけで定期的に数学の本と格闘しているが、
昨年挫折の小林俊行「地力をつける微分と積分」は未攻略。
より簡単な本に触れながら、数学回路ができることを祈り、
ふたたび東大文系数学に挑戦しようと企んでいる。
今回手に取ったのは、大栗博司「数学の言葉で世界を見たら」。
10年以上前に読んだ著者の「重力とはなにか」が読みやすく、
科学の最先端で何が行われているかを知る手助けになった。
この人の書いた数学の本ならば、と書店で手に取ってみたら、
「不確実な情報から判断する」という章立てを目にして即買い。
この章ではこんな式が示されていた。
- 1回の賭けで、勝って1円を得る確率がp、負けて1円を失う確率が q=1-p になるギャンブルで、
- m円を持って賭けをはじめたギャンブラーがN円持って帰る確率 P(m,N)
ギャンブルの胴元がコインに細工をして、
p=0.49、q=0.51 (胴元側が1%有利)とすると、
P(100,200) ≒ 0.02
- 持ち金を倍にして帰れる確率は50回に1回
- 98%の確率でギャンブラーは破産する
- アメリカ式のカジノルーレットは、p=0.47 に設定している
わずかな差が有利不利を大きく左右する。
どんなに少ない差でも自分が有利な時だけ勝負するのが大事。
ギャンブルに限らず、投資の教えとしても有益だ。
そしてこの話に関する著者のまとめは、
「何かで大きな成功をした人は、普通の人にはない特別な才能があるように見えるかもしれない。もちろんそういう場合もあるけれど、普通の人とあまり変わらなくても、積み重ねる確率をほんの少しずつ有利にするだけで、長い目で見て大きな差ができてしまうこともある。ここで話した確率の公式は、そういうことを教えているように思う。」
全10話のうち1~3話は身近な内容でわかりやすかった。
暗号化に絡む4話はなんとかついていき、5話は分からず。
6話はXY座標の歴史の話が多く、数式は簡単なものが多い。
7~9話はほとんど頭に残らず、10話は数式なしで一番簡単。
7話が微分・積分の話だったんだけどなぁ…と思いつつ、
数学の読み物としては易しい部類だと思う。
理系に進まなかったことを後悔している方はぜひ。
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