金融の神様は何を間違えたのか?/セバスチャン・マラビー「グリーンスパン」

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1987~2006年にFRB議長を務めたアラン・グリーンスパン

在任中は「神様」や「マエストロ」と崇められていたが、
退任直後に起きた金融危機に責任の一端があると指摘され、
その評価は失墜。今も功罪の議論が続いている。

私が投資をはじめたのは2000年ということもあり、
その功罪についてあまり詳しくないため、評伝を手に取った。

著者が注目したのは、グリーンスパンが1959年に書いた論文(P63~)。
当時としては他の経済学者やエコノミストを先んじた内容で、

  • 株価は「経済の先行きを予測してくれるものというよりは、目の前で繰り広げられる経済活動を左右する重大な要因」であり、金融市場がブームと景気後退の主因たり得ると指摘。

  • 資産価格と設備投資、消費者行動の繋がりを論じ、後に広く知られる「資産効果」を説明した。

  • 資産効果ゆえに、FRBの幹部は資産価格を無視してはならないと主張。

  • 「株式相場のピークが高くなれば高くなるほど、『正常な状態』に戻るために大幅な下落によって調整することが求められ、経済活動もより深刻な収縮に見舞われる」からFRBはバブルを制御すべき。

さらに1977年の論文でその内容をアップデートし(P236~)、
住宅価格に関する内容も盛り込まれている。

  • 経済予測モデルは資産価格の変動が消費に与える影響を組み込んでおらず、とくに住宅の含み益を追加のローンで現金化する動きが「標準的なモデルにはほとんど反映されていない」。

  • 住宅価格の上昇が消費を押し上げて終わりではなく、次には、消費の拡大がさらに住宅価格を上昇させる方向に作用すると主張した。金融と「実体」経済の間に循環の経路が形成され、バブルが形成される。

まさに未来を予言するような内容で、しかも自身のFRB議長の在任中に、
この手のバブルが起きていたにも関わらず、なぜ適切に動くことができなかったのか?

著者の結論は、グリーンスパンが金融の安定より物価の安定を重視したからであり、
またFRBの役割に限界があったからと指摘する。

「彼が、バブルとレバレッジの抑制を中心的な任務の一部に据えようと試みる場合、インフレと雇用に焦点を絞るというこれまでの議会からFRBへの委任は見直しが必要になる。しかも、FRBがそれに従って行動しやすくなるように、政治家たちと一般大衆のFRBに対する期待も変えなければならない。」(P738)

ゆえに「根拠なき熱狂」(1996年)と相場が行き過ぎていることは指摘しても、
実際に金融政策によって対策に踏み込むことはしなかった。そこが運命の分かれ道だった。

「ハイテク・バブルが破裂しても影響が軽微だったのは、FRBが経済活動の停滞を避けるために積極的に金融を緩和したからだった。そのことが、結果的に後の資産バブルの一因になったと非難できるのであれば、大元のハイテク・バブルの生成を許したことこそが2008年の危機の発端だった。ハイテク・バブルが弾けてデフレのリスクが登場すると、FRBはそれを抑え込んで、景気を浮揚させるために、不動産市場を泡だらけにするくらいの金融緩和を進めなければならない状況に置かれた。おまけにテロ攻撃の後で経済停滞のリスクが一段と高まってもいた。」(P647)

だが、当時幅広く支持されていたグリーンスパンならば、
FRBの役割を広げ、バブルの制御に乗り出すことができたのではないか?
というのは、「たられば」にすぎない。。。

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