行動遺伝学者の安藤寿康氏と、作家の橘玲氏の対談本、
「運は遺伝する」がわかりやすく、遺伝学に関心がある方にオススメ。
(キャスリン・ペイジ・ハーデン「遺伝と平等」は難しくて途中で挫折)
その中でこれは頭に入れておきたいなと感じたのが、
行動遺伝学の権威、エリック・タークハイマーが提唱した、
「行動遺伝学の3原則」。
- ヒトの行動特性はすべて遺伝的である
- 同じ家族で育てられた影響は遺伝子の影響より小さい
- 複雑なヒトの行動特性のばらつきのかなりの部分が遺伝子や家族では説明できない
第1原則の意味はきわめて大きく、
私たちのあらゆる能力や個人差に遺伝の影響があるということ。
そして社会が豊かになるほど遺伝的な潜在能力を発揮しやすくなる。
第2原則は、子育て等の共有環境の影響はじつに些細なもので、
影響があると考えれているものの多くは遺伝によるものということ。
第3原則は、私たちの個性には遺伝と子育て(共有環境)以外の、
なにか(非共有環境)が、はるかに大きく影響していることを示す。
つまり個性を「遺伝率+共有環境+非共有環境」で説明しているのだ。
共有環境の影響は大きくなく、非共有環境は偶然性に左右されるから、
結局は遺伝で人生が決まるのではないか?という意見もある。
ただ非共有環境を多数の偶然からなる予測不可能なものとするのは早計。
遺伝情報のデータベースを構築すれば、予測可能なものに変わるかもしれない。
おそらく今後、遺伝行動学の知見がどんどん身近になってくる思う。
でも中途半端に聞きかじると「優生学?ナチス?」とあらぬ勘違いしがち。
個々人の持つ遺伝的素質が自然に発揮できる方法を探求し、
一人でも多くの人が自分らしく生きることができるような世の中を作る。
それが遺伝行動学に対する現時点の私なりの理解だ。
コメント