ふと出だしを再読したスーザン・ストレンジ「カジノ資本主義」。
現代社会を覆う金融の問題の本質を捉えており、預言書のように思えてくる。
「西側世界の金融システムは急速に巨大なカジノ以外の何物でもなくなりつつある。」
「自由に出入りができる普通のカジノと、金融中枢の世界的カジノとの間の大きな違いは、後者は我々のすべてが心ならずもその日のゲームに巻き込まれていることである。」
これが書かれた1986年よりもさらに事態は悪化し、
2000年以降はIT革命と賭け合わさって、カジノ化はさらに加速。
やがてリーマン・ブラザーズ破綻を機とする金融危機が訪れ、
住宅ローン証券等と無縁の世界中の庶民が不景気の闇につつまれた。
カジノ化した金融が社会・経済を動かすようになることで、
私たちの人生は「偶然」や「運」に左右されやすくなってしまった。
「将来何が起きるかは全く運によって左右されるようになり、熟練や努力、創意、決断、勤勉がだんだん評価されなくなる。そうなると社会体制や政治体制への信念や信頼が急速に消えていく。自由な民主社会が最終的に依拠している倫理的価値への尊敬が薄らいでいく危険な兆候が生じる。」
「かつては多様な要因によるものと納得されていた不運が、突然ずっと痛切に感じられ、不平等に対する恨みも深くなる。運によって左右される領域が大きくなりすぎ、システムが非常に恣意的で不平等に運営されているように思われる。こうなると欲求不満や怒りが強まり、いっそう暴力的に表現されるようになる。」
人類が自由と平等を求める過程で生まれた資本主義が、
運・不運の差で不平等を生む仕組みに変貌してしまったのでは?
そんな問題提起が30年以上も前にされていた。
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