色あせ始めた? カーネマン「ファスト&スロー」

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ダニエル・カーネマンの「ファスト&スロー
著者がノーベル経済学賞を受賞したことで、
今度も読みつがれる名著になるだろうと思っていたが…。

最近、立て続けにその内容に疑問を呈する本に出会った。

ともに著者は心理学者で、この分野での過去の研究において、
再現性に問題があるものが、次々と判明していると指摘。

2015年に大規模な追試実験が行われ、
権威ある学術誌3誌から100の研究を選んで再現を試みたところ、
再現に成功した研究はわずかに39%にすぎなかったという。

これをきっかけに過去の研究を見直しがはじまった結果、
有名なスタンフォード監獄実験にも疑いの目が目が向けられた。
そしてその波紋が様々な心理学の研究を紹介した、
カーネマン「ファスト&スロー」にも及んだのだ。

同書の第4章「連想マシン」においてカーネマンは、
プライミング効果(以前受けた刺激がその後の行動に影響)
を紹介し、次のように評した。

「プライミング効果をまったく信じないという選択肢がないことは、ここで強調しておきたい。実験結果はでっちあげではないし、統計学的に見て偶然でもない。これらの研究が到達した結論は正しい、ということは受け入れるほかないのである。」

しかし後にこの理論は否定され、2017年にカーネマン自身が謝罪。

スチュアート・リッチー「あなたが知らない科学の真実」では、
権威による誤り拡散の代表例として紹介されている。

また「ファスト&スロー」と言えば、

  • システム1(速い思考、直感、本能)
  • システム2(遅い思考、論理、理性)

細かい内容は忘れても、誰もがこれだけは記憶に残っているはず。

しかし、ラッセル・ポルドラック「習慣と脳の科学」によると、
心を二分する考え方に疑問が呈され、見直しが進んでいるとのこと。

今後も「ファスト&スロー」は名著として生き残っていけるのだろうか?

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