考える足/池田譲「タコの知性」

この記事は約2分で読めます。

タコの吸盤はセンサー。
情報を伝える神経細胞は体全体で約5億個あるが、
そのうち3億個は足の中心に走る神経節細胞。
脳よりも足に情報伝達装置が配置されているのだ。
ちなみに吸盤には触覚だけでなく味覚もあるらしい。

そしてタコの足は、すべてが脳の司令で動いているのではない。
頭に加えて8本の足を加えた9つの脳を持っているとも言える。
パスカルの「考える葦」ならぬ「考える足」である。

またタコは触覚だけでなく視覚も優れており、
隣の水槽で実験をしているタコを観察し、学習することができる。
外界環境に対する強い好奇心を持っているようだ。
進化の過程で体を守る硬い殻を捨てた要因のひとつかも。

本書で示されるタコの知性を目の当たりにして、
気になることといえば、調理法問題。

とくに甲殻類に痛覚があるからということで、
ヨーロッパでは調理法に法律的な制限が設けられている。

痛覚だけに焦点をあてているうちはいいかもしれないが、
そのうち知性にも話が広がっていきそうな予感がする。

そうすると植物の知性についても問題になるわけで。

知性や学習、コミュニケーションといった能力は、
動物の専売特許ではなく、植物にも共通している。

たとえば草刈りの後に、草の香りが充満するのは、
周辺の仲間に「やられた!」と知らせるための、
断末魔の叫びだったりするのだ。

漁業や農業に携わる人たち、料理人の人たちが攻撃される、
変なハラスメントに発展しそうな嫌な予感がする。
人は善悪や美醜など二元論に走ると暴力的になるものだから。

知性は余計な苦しみも生んでしまう。

タコの知性 その感覚と思考 (朝日新書)
朝日新聞出版
¥891(2024/09/17 18:32時点)

コメント