日本文化を考える/神田邦彦「現代文 標準問題精講」

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大学受験用の現代文問題集の学習メモ。

一人称を使い分ける日本語の心理

鈴木孝夫「閉ざされた言語・日本語の世界」を題材に学ぶ

日本人は目の前の相手次第で、一人称代名詞をコロコロ使い分ける。それはつまり「自分は何者であるか」ということが、「相手は誰か」に依存する構造になっていると言える。このような特徴は、西欧諸国の言語にはまったく見られない。

こうした言語的特徴が、他人の出方が分からないうちは自分の意志を決定できないという、他人志向型の大勢順応主義を生んでいる。しかしデメリットばかりではない。日本人は一貫した方針をたてて、それをどこまでも貫こうとするより、状況に応じて、その時々の最も効率の良い解決策を見いだすことに長けているとも言える。

一貫性がなさは日本文化の特徴

日本文化全般にわたって、
今この時、この瞬間を大事にしようとする傾向が強い。

こうした背景に何があるかといえば、おそらく自然災害の多さ。
それが継続する美よりも瞬間の美を捉えようとさせるのだろう。

そして一貫性のなさが変化への適応力を生むなんて嘘だ、
という考え方は、日本人特有の自虐にすぎないのだろう。
そうでなければ創業100年超の老舗企業がゴロゴロしているはずがない。

もったいないは本来…

原研哉「日本のデザイン」を題材に学ぶ

何もない簡潔さこそ、高い精神性や豊かなイマジネーションを育む温床であると、日本人はその歴史を通じて、達観したはず。しかし戦後の飢餓状態を経験したことで、モノを所有することに、豊かさや充足感を感じるようになってしまった。

モノを捨てる時に「もったいない」と表現するが、今の日本に必要なのは無駄なモノを捨てることだ。廃棄を運命づけられた大量生産・大量消費こそ「もったいない」のだ。「もったいない」をより前向きに発展させる意味で、無駄なモノを捨て、モノの持つ相応の美しさを味わう心を取り戻さなければならない。

失われつつある引き算の美学

引き算の美学。
日本文化を語る上で外すことのできない美意識。

しかし禅寺や懐石料理屋に足を運ばなければ、感じることができず、
日常の生活は…、生きるということはゴミを増やすことなのでは?
と思ってしまうほどの惨状だ。

ふと気が付けば日常だけでなく、神社の現状もなんだかおかしい。
多くの神社は「縁結び」で客寄せをする場になってしまい、
神がときおり訪れる際の宿としての本来の神聖さは失われつつある。
(とはいうものの財政難だから仕方がないのだが…)

「もったいない」の「もったい(物体)」は「物のあるべき姿」。
つまり物のあるべき姿が失われ、残念に思う気持ちが「もったいない」。

いろいろともったいない世の中である。

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