何かしらの信念を持った人間は信頼されやすい。
しかしその信念に固執しすぎて思考停止に陥るのはダメだ。
菜根譚を読み返していたら、そのバランスの大切さが示されていた。
信念を貫くべきだ(前集112)
意を曲げて人をして喜ばしむるは、躬を直くして人をして忌ましむるに若かず。
善なくして人の誉を致すは、悪なくして人の毀を致すに若かず。
信念を曲げてまで世間の評判を得るくらいなら、
たとえ人に嫌われようと、自分の信念は貫くべきだ。
善いことをした訳でもないのに賞賛されるくらいなら、
いわれのない避難にさらされる方がマシだ。
なんとなくヨハン・クライフを思い起こさせる一節だ。
- ヨハン・クライフ追悼の想いを込めて名言集(16/03/24)
そして信念や美学を持たない人間は、烏合の衆になりやすい。
なんだか分からない安心を求めて思考停止の集団となってしまう。
- 大衆に埋没しない生き方のヒント/オルテガ「大衆の反逆」(19/02/25)
純粋に美学を貫き通す「数寄者」であるためには、
他者と群れたり、媚びたりせず、孤独と向き合うことが大切だ。
- 数寄者は名利を求めるべからず(13/01/02)
ただしこの世に絶対的な判断基準などというものはない。
ともすれば間違った信念に固執している可能性もある。
信念にこだわりすぎるな(前集130)
群疑に因りて独見を阻むなかれ。
己の意に任せて人の言を廃するなかれ。
世間に支持されないからといって、自分の意見を変えてはならない。
自分の意見に固執するあまり、他人の意見を無視してはならない。
信念を持つことは良いことだが、他者の意見にも耳を傾け、
常に信念を更新し続けなければ、害でしかなくなってしまう。
- 哲学や信念を持つな!/いまさら「超訳ニーチェ」(15/11/26)
積み上げてきた経験に反する意見を受け容れるのは難しいもの。
だからこそ老子が「しなやかな水」を最善のあり方と捉えたのだろう。
- しなやかな水のように/老子(8、67、78章)(13/04/28)
そしてしなやかさを失わないために最も大切なのは、
好奇心や考え続けることへの喜びなのだと思う。
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