WIREDの創刊編集長ケヴィン・ケリーの最新作。
前作の「テクニウム」は難解で挫折したが今作は読みやすい。
ただ著者のクセなのか、冗長になりがちなのが少し残念。
テクノロジーの進展による最近の専門家やマスコミのコメントは、
私たちの仕事がどれほど機械に奪われるかばかりを強調する。
これとは真逆の明るい未来を描いているのが本書の特徴だ。
「歴史上、何かを発明するのにこんなに良いときはない。いままでこれほどのチャンスや、いろいろな始まりや、低い障壁や、リスクと利得の格差や、収益の高さや成長が見込めるタイミングはなかった。いまこの瞬間に始めるべきだ。いまこそが、未来の人々が振り返って『あの頃に生きて戻れれば!』と言うときなのだ。」P40
とくに現在、人工知能による脅威が叫ばれているが、
これからの「人工知能」をこれまでの「電気」と捉えると未来は明るい。
「いま姿を現しつつあるAIは、どちらかというとアマゾンのウェブサービスのようなもので、安価で信頼性が高く、あらゆるサービスの裏に隠れている実用的でスマートなデジタル機器であり、作動している間はほとんど気づかれることもない。・・・それは電気がこの100年にしてきたように、不活性な対象物を活性化する。」P47
たとえば洗濯が手洗いから洗濯機に変わってどれだけ便利になったか?
電気による自動化で私たちは多くの肉体労働から解放され、余暇を手にした。
AIによる自動化は数値や文章の入力や分析等の単純労働から私たちを解放するだろう。
そういえば気が付かないうちにすでに私自身も使っているのかもしれない。
ネットサービスやシステムを導入して作業効率を向上させているから、
晩ご飯を作って妻の帰りを待つ、なんて時間の余裕があったりするわけだ。
「本の運命について詳細に調査をすべきなのは、多くのメディアの中でスクリーニングが最初に変容させるものだからだ。スクリーンで読むことは最初に本を変え、本による図書館を変容させ、次には映画や映像を変え、ゲームや教育に破壊的変化をもたらし、最終的にはすべてのものに影響することになる。」P120
私たちはグーテンベルク以来の変革の時にいる可能性はある。
活版印刷術の発明は多くの国で音読社会から黙読社会への転換点だった。
おそらく黙読がスクリーンに触れる触読に変わるだけの変化ではないだろう。
すべての本がデータ化され、分野を超えた関連性が視覚化されることで、
考えもしなかった過去と現在のつながりが浮かび上がるかもしれない。
「瞬時に世界につながる時代になって、あらゆるものへの確信がますます持てなくなっている。権威から真実を教えてもらうのではなく、ウェブを流れている液化した事実から自分なりの確かさを集めて回ることになってしまったからだ。唯一の真実だったものが、複数の事実の集まったものになった。」P369
こんな時代だからこそテクノロジーによって再編集された古典!
そしてテクノロジーを駆使した編集技術に長けていれば、
読書は単なる趣味にとどまらず、稼ぎに直結するかもしれない。
読書家にとって未来は極めて明るいと言えるだろう。
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