森絵都「カラフル」

この記事は約2分で読めます。

文章がきれい。この人の小説をもっと読んでみたいと思った。

 黒だと思っていたものが白だった、なんて単純なことではなく、たった一色だと思っていたものが、よく見るとじつにいろんな色を秘めていた、という感じに近いかもしれない。

たった10年じゃ、終わってもなければ、始まってもいないのかな。
彩り豊かなこの世界で起こる様々な出来事を、受け止められなくなっただけ?

もしかしたら、元いた場所に帰ってくることもあるかもしれないけど…
もっと違う世界を見てみたい。もっとカラフルに生きてみたい。

 人は自分でも気づかないところで、だれかを救ったり苦しめたりしている。この世があまりにもカラフルだから、ぼくらはいつも迷ってる。どれがほんとの色だかわからなくて。どれが自分の色だかわからなくて。

人は知らないうちに、誰かの心の支えになっていたりするもの。
支えている人はもちろん、支えられている人も、普段は少しも気づかなくて、
失ってからその存在の大きさに、愕然としたりする。
世の中があまりにカラフルだから、大切なことも見失ってしまうのかな。

自分のことだって、よく分からない。
会う人それぞれの心の中で、色づけされた私がいて、きっと全部違う。
いろいろな自分に会いたいから、人はつながりたいと思うのかな。

カラフル (文春文庫)
文藝春秋
¥715(2024/04/28 02:23時点)

コメント