金融危機後の景気回復が雇用拡大を伴わないのはなぜか?
アメリカで議論されるきっかけとなったのが、
タイラー・コーエン「大停滞」だという。
※原題は"The Great Stagnation"(2011年1月)
20世紀に自動車産業が成長した時と比べると、
インターネット産業が生み出した雇用は極めて少ない。
「イノベーションの停滞」が原因との主張だった。
企業そのものを金融商品であるかのようにみなし、
研究開発に時間のかかる製造業を捨てたアメリカ。
ものづくりにこだわり、変わることができない日本。
日本とアメリカの失業率の推移から判断すると、
この時のコーエンの主張はなんとなく腑に落ちるものだった。
これを受けてマサチューセッツ工科大学(MIT)の
エリク・ブリニョルフソン、アンドリュー・マカフィーが
「機械との競争」で異論を唱える。
※原題は"Race Against The Machine"(2011年11月)
雇用が回復しない原因として専門家が唱える説を
以下の3つに整理し、
- 景気循環説(回復に時間がかかっている)
- 停滞説(技術革新の伸び悩み)※コーエンはここ
- 雇用喪失説(技術革新により労働力が不要に)
3番目の雇用喪失説を採用。
技術革新のスピードに人間が時代遅れになってしまい、
人間にしかできない仕事が急速に減少していることを指摘。
この議論はその後どうなったのか?
コーエンの最新刊の邦訳「大格差」を読んでみた。
原題は"Average Is Over"(2013年9月)
結論を言うとコーエンは雇用喪失説へくらがえ。
コーエンの描く人と機械との未来は、
- 人間とコンピューターのチームこそ、最強のチームである。
- 賢い機械を動かす人物は、その課題に関する専門家である必要はない。
- 技能が一定水準に達しない人物を機械と組ませると、機械単独の場合よりも有効性が落ちる。
- 自分の限界を知ることが今まで以上に重要になる。
であり末尾ではこうまとめる。
「これからやって来るのは、天才的なマシンの時代。そういうマシンと働ける人が豊かになる。社会は大きく二つに分かれることになる。テクノロジーに牽引される活力のある産業で働き、目をみはる成功を収める人たちと、それ以外の人たちに。」
つまり機械によって中産階級の仕事が失われ、
機械を使いこなす人材に富が集中する未来が来る。
ゆえに「大格差」であり"Average Is Over"なのだ。
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