イランとアメリカのすれ違い/高橋和夫「イランとアメリカ、そしてイスラエル」

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高橋和夫「イランとアメリカ、そしてイスラエル」を読み終えた。
前回のガザ侵略後のイスラエルを中心にした中東情勢に続き、
イランとアメリカとの関係の歴史を紐解いた章をメモ。

  • 1951年に成立したムハンマド・モサデク政権がイランの石油国有化を断行。反政府勢力をアメリカが支援し、テヘランのアメリカ大使館が反モサデクの作戦本部のような役割に。モサデク政権崩壊後は、反政府勢力を鎮圧するための秘密警察がアメリカの支援で組織された。
  • 1963年、アヤトラ・ホメイニが抗議の声をあげ、テヘランでのデモに軍が発砲。この事件によってホメイニは反シャーのシンボルに。
  • 1978年、石油労働者のストによって、人権外交を標榜しながらも石油利権を優先していたカーター政権もシャーを見放し、翌1979年1月にシャー亡命、2月に国外追放されていたホメイニが帰国。
  • 1979年11月、アメリカ大使館人質事件。反モサデククーデターで司令塔の役割を果たしたアメリカ大使館を学生が占拠。ホメイニはアメリカとの対立という非常事態を利用して、政治の決定権を最高指導者が握る憲法案を成立させた。
  • 1980年11月、アメリカ大統領選挙でレーガン勝利。現職のカーターが有利にならないよう、人質を解放しないようイラン側と裏工作。見返りとしてイラン・イラク戦争(1980~88年)でアメリカがイランへ武器供与。
  • 1989年の冷戦終結に先立って、1988年2月、ソ連がアフガニスタンからの撤退表明。ソ連の封じ込めの課題がなくなったアメリカはイランに対する態度を硬化しはじめる。1993年のパレスチナ解放機構との和平(オスロ合意)によって、新たな悪者を必要としていたイスラエルの意向。
  • 1997年にイラン大統領となったハタミは、アメリカとの関係改善を望み、交渉が続けられていたが、2001年の9.11によりアメリカの中東政策が激変。テロとの戦い、大量破壊兵器の拡散防止が新たな命題となり、イランの核開発が問題として浮上。2002年1月にブッシュ大統領による悪の枢軸(イラン、イラク、北朝鮮)演説。
  • 2005年、イラン大統領選挙で強硬派のアフマディネジャードが勝利。2006年1月、ウラン濃縮の再開を宣言。2009年1月にアメリカ大統領に就任したオバマがイラン核問題の外向的な解決を目指す。ただしアメリカで石油と天然ガスの生産が増え始めていたたこともあり、イランとの本格的な交渉に至らず。
  • 2013年8月にイランの大統領にローハニが就任したことを受けて、安保理常任理事国にドイツを加えた6カ国と交渉開始。2015年7月、核合意成立。しかし福音派の支持を受けてアメリカ大統領選を制したトランプが、イラン核合意から離脱(2018年5月)、イランは合意で決められた上限を超えるウラン濃縮を再開。
  • 2021年に大統領に就任したバイデンは、民主・共和が拮抗する議会、本人の不人気もあり、核合意再建の交渉に臨むことができない。2022年2月、ロシアによるウクライナ侵攻。イランのドローン技術がロシア軍を支えていたこともあり、さらに交渉が困難に。
  • 2025年6月、アメリカ軍によるイラン核施設の攻撃。大統領就任直後は交渉の姿勢を見せていたトランプが態度を変えた背景は、イスラエルに個人的な弱みを握られた? エプスタイン問題?

これまでの歴史からイランとアメリカの合意成立には、
両国で同時に交渉に前向きな政権があるという条件が不可欠。
しかしこれがなかなか噛み合わない。

また直近、2026年3月の状況を考える上で、
トランプの支持層であるアメリカのキリスト教福音派の理解が、
あらためて重要性を増しているように思える。

イスラエルを守ることで、イエスが再臨するという終末論を持つ福音派。
それに脅威となる周辺国がなくなったイスラエルの強気が合わさって、
アメリカとイスラエルによるイラン攻撃に繋がっているように思う。

昨年出版された、加藤喜之福音派とセットで読みたい一冊だ。

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