別冊ele-king「アメリカ すでに革命は起こっていたのか」

この記事は約3分で読めます。

本屋で偶然出会った「ele-king」という音楽雑誌の別冊誌。

ele-kingのウェブサイトを覗いてみると、
これまでの私の人生とは無縁の内容でまったくついていけない。

でもこの別冊誌は掲載されているインタビュー記事が、
これまでアメリカの現状を探るべく読んできた本の著者が勢揃い。
石田健さん、大澤真幸さん、岡本裕一朗さん、三牧聖子さんなど。
これは読んでみたい!と即決で購入してきた。
(アメリカ音楽や映画に言及した記事もあったが門外漢でも理解できた)

以下に気になった部分をメモ書き。
今の私に足りない知識は、アメリカの宗教的背景だと確認できた。

  • オバマは「ひとつのアメリカにする」「保守でもリベラルでもない」と宣言したが、双方の顔を立てようとしてどちらも不幸に。続いて現れたトランプは国民を敵と味方に分け、自分の支持基盤にだけに利益を還元する方向性へ。
  • アメリカの大学進学率は75%(日本は55%)で、大学を出たぐらいではミドルクラスの生活はできない。それに加えてAI・ロボットによってホワイトカラーは代替され、不満は高まっていく。
  • ピーター・ティール「ゼロ・トゥ・ワン」はスタートアップの考え方や組織の作り方を説明しているビジネス書に見られがちだが、政治や統治に関する哲学的な議論を展開している本。またティールの思想はキリスト教的終末論の現代版とも言える。
  • 経済成長していないことと、共同体としての共通の物語がないこと。これがリベラリズムが本来もっていたはずの、物惜しみせずに他者へと与える「寛大さ(リベラリティ)」を崩壊させ、個人の権利の擁護ばかりに焦点があたるようになった。
  • 多様性の解像度があがるほど、排除と包摂の境界が引き直され、現場では公正さを担保するためのマニュアルを必要になっていく。これに対する反発が起きているのが現在のアメリカ。
  • 冷戦はアメリカの幻想であり、宗教的な現象だった。先進各国にそこそこの勢力の共産党がいたがアメリカのように恐れなかった。アメリカの共産主義に対する恐怖は、合理性を超えた「悪魔」がいると信じているかのような怖がり方だった。
  • 現在のアメリカを覆っているフェイク・ニュースと短期利益の追求は、「迷信」と「現生利益」に置き換えることもでき、新興宗教を特徴づける性格を持つ。また1980年代以降の「アメリカが何かに襲われる映画」の多さは、新興宗教が唱える終末論とも重なる。
  • リベラル・デモクラシー(自由民主主義)はもともと両立不可能なものを結びつけた概念。自由は基本的に競争原理だから格差が生じるのは大前提。それに対して民主主義は平等性を追求するもの。20世紀にはソ連の存在があったため、その矛盾は不問とされていた。

先月から急速に円安が進み、ふたたび1ドル=160円が見えてきた。
ポートフォリオを円建てにすると、アメリカへの投資割合が日本を大きく上回る。
投資家としてアメリカの行く末を考えるために、オススメの一冊だ。

コメント

  1. こた より:

    私もこのテーマは最近すごく気になっていて、どちらかというと、経済のシステムから考えようとしていました。例えば、経済的価値と本当の豊かさの違いであったり、経済的な効率化と経済安全保障のトレードオフなど。これは自分の行う投資にも跳ね返ってくる哲学的なテーマで非常に難しいですが…
    ともかく、経済成長や効率化に対する価値観の背後にある宗教的背景は重要な鍵のようですね。

    • 吉田喜貴(まろ) より:

      宗教の話は少ないですが、アメリカの思想的背景を知る上で一番わかりやすかった本は、岡本裕一朗「アメリカ現代思想の教室」です。
      https://pixy10.org/archives/post-8420.html
      こちらの本もおすすめです。

      • こた より:

        記事と本をご紹介いただきありがとうございます。
        「自由」がキーワードですが、個人的には「誰にとっての」自由なのかがポイントな気がしました。人間は集団になって初めて力を持ちますが、そのためには全員ができる限り同じ方向を向いている必要がありますし。
        こちらの本にもあたってみます。