早川書房のKindleセール(7月14日まで)を機に、
気になっていたSF小説をいろいろ購入して読んでいる。
これまでのところ一番面白かったのが、
VRゲームの近未来を題材にした小説で、
この手の小説を機にNVIDIAへ早期に投資できたこともあり、
これから起きることをSFで見通せたらいいなと考えている。
物語の舞台は2040年代のVRMMO「セルフ・クラフト」。
現実の約100倍のスピードで時が流れる設定となっており、
人工生命「G-LIFE」が凄まじい進化を遂げていく。
日本のサーバーでは偶然に現実を追い越す生物の進化が起き、
現実世界に技術移転することが、日本の経済優位性となっている。
そしてそれを妬んだ他国に不穏な動きが…。
全3巻の主人公とテーマを簡潔に紹介すると、
- 老生物学者が主人公。独自の進化を遂げる人工生命を探求する中で出会ったNPCとの恋愛が描かれる。
- 日本の首相が主人公。セルフ・クラフトが国際紛争に発展。たかがゲームとの認識のサイバー攻撃が…。
- 主人公はゲーム内で進化した竜。民主主義教の竜僧侶が自由・平等・友愛について自問自答しながら世界を救うために奔走する。
最も興味深かったのは3巻の民主主義を宗教として捉える視点。
現実世界が存在することすら知らないゲーム内の竜僧侶は、
人間の民主主義に対する捉え方を不思議に感じている。
「民主主義については神という言葉を使ってないだけにも聞こえる。これは民主主義教の僧侶として今までずっと生きてきての話だが、民主主義の根幹は民主主義をよしとする信仰だ。理屈としての民主主義神の教えは完璧とは到底言えない。それでもそれを選ぶのは好きだからであり、そこに理由はない。これこそが信仰であり、宗教だろう。人間とて局面局面での民主主義の不利や問題に当たることは多いはずだ。それでもそこに民主主義があるのなら、宗教と言っていないだけで信仰はあるのだろう。」
これに対する人間(著者)の回答は、
「それは外の歴史に関係する。人類はかつて別の宗教を持ち、その後に民主主義が発生した。民主主義は宗教を名乗らないことで別の宗教と共存し、争わぬことを選んだ。そういう経緯を辿っていないお前たちが民主主義を宗教とするのは、それはそれで自然というか、間違っていない気がする。」
民主主義を宗教と捉えたことがなかったから新鮮だった。
あと気になるのは、仮想世界の時間を加速させる設定。
「ソードアート・オンライン」アリシゼーション編にも出てきた。
フルダイブ技術が実現した時、人類は必ずこれを目指しそうだ。
技術革新のスピードを上げるよりも、疑似・不老不死を目的に。


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