東京工業大学の歌うナマコ研究者、本川達雄教授の最新刊。
これまでの著作の総集編なのか、伝えたいことを目一杯詰め込んだ一冊。
全11章をテーマごとに分けるとこんな感じかな。
- サンゴ礁から説く生物多様性の問題(1-4章)
- 生物の形からデザインや技術を説く(5-6章)
- 生物のサイズ・エネルギー・時間から説く現代社会の問題(7-10章)
- 最後にナマコの話(11章)
「サンゴ礁は面積では世界の海の0.1%しか占めていませんが、海水魚の1/3はサンゴ礁の種です。漁業でも、世界の漁獲高の10%をサンゴ礁が占めています。」P50
そういえば領土問題が起きてる南沙諸島にはサンゴ礁が広がってる。
身体は大人、頭脳は子供、ってコナンの逆のようなあの国、困ったものだね。
「科学は普遍性を大切にします。・・・ところが生物は個別主義でご当地主義です。・・・だから多様な生物はそれぞれが特殊なのであって、普遍性を大切にする科学の目から見ると、そんな物は重要性が低いと思われがちなのですね。」P70
いくら生物多様性の保全を唱えても、人が地球のすべてを把握できてないし、
科学的な視点から価値判断をすると、生物の総「量」でしか計れない。
著者が言うように「質」や「かけがえなのなさ」をどう判断するかが課題。
「動物の体の中では、エネルギーを使えば使うほど時間は速く進んでいきます。そして一生の間に使えるエネルギーはみな定まった同じ量なので、速い時間の動物は短命ということになるのです。」P172
ところが私たち人間は、体の外側で資源エネルギーを消費して時間を速めた。
その結果、社会の時間は「ドッグイヤー」と称されるほど速くなったが、
体の時間はそのままだから、私たちはこのギャップに疲れ果てている…。
しかも、資源エネルギーの消費により、地球環境問題が起きている。
生物学の視点から、現代文明に疑問を投げかける。
7章以降の後半部はちょっと難しいけど、視点が変わっていておもしろい。
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