本屋で見かけた、学習塾の日能研が発表している、
過去3年間で中学入試の国語で出題された作品リスト。
出題回数が上位の本(ちくまプリマー新書が多い)を、
だいたい読んでみて、一番興味深かったのが、
私たちが「なぜ死にたくないのか?」を考える際に、
- 多細胞個体である「私」としての命
- 子孫へと受け継がれる生殖細胞の命
の2つの命に分けると不思議なことがある。
「増える」ことが生物と非生物を分けるものなのに、
死にたくないと感じるているのは、多細胞個体の「私」。
生殖可能な年齢を超えて生きられるようになったことで、
「個体の生き残りやすさと生殖細胞の増えやすさとのズレが大きくなってきているように見えます。言い換えると、私たちは増えるものの既定路線から外れつつあるということです。原因は多細胞個体とは生殖細胞の乗り物であったにもかかわらず、多細胞個体の方を大事に思ってしまったという誤解にあります。これが人間の未来に大きな影響を与えるような気がしています。」
ここからは本書で触れられている話に私が勝手に付け加えて、
多細胞個体と生殖細胞のズレに伴う影響を思いつくまま列挙すると、
- 止まらない少子化…生殖よりも個体の生活の質を優先する価値観の浸透
- 生殖技術と倫理の衝突…生殖細胞の自然な進化過程より人工的な個体改良(デザイナーベイビー)が優先される
- 社会保障制度の崩壊…健康寿命を超えた延命による財政圧迫(年金制度は設立当初、平均寿命を超えて生きた人のボーナスだったはずだが…)
- 恋愛の商品化…恋愛が生殖から切り離され、一部の恵まれた人の遊びとなる
- 健康格差の拡大…富裕層が個人の延命技術へ投資を集中させることで、健康格差が拡大する
こうした流れを止めることはできないだろうなと思う。
最後に著者が紹介していた事例で気になった生物増殖の話をメモ。
- シアノバクテリア…約27億年前に光合成を最初に始めて大繁殖。地球の大気にほとんどなかった酸素の濃度が35%近くまで上昇。
- 真菌…その後、植物を分解する真菌が大繁殖したことで、酸素濃度は現在の20%程度まで低下する。
現在、二酸化炭素濃度0.01%の増加を問題にしていることを考えると…
そしてこの話の最後に著者はこうまとめる。
「生物は、増えられる環境があると後先かまわず限界まで増えてしまう性質を持っているように見えます。」
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