曹洞宗の開祖、道元の弟子が師の教えを書きとめた名著。
道元自身が遺した「正法眼蔵」より読みやすいのが特徴。
「はづべくんば明眼の人をはづべし。」(1-1)
つまらぬ人の目を気にする必要はない。
賢者の目(=明眼の人)を恐れるべき。
だから身近に賢者と呼べる人のいない人生はダメだ。
「きかんよりは見るべし。見んよりは経べし。いまだ経ずんば見るべし。いまだみずんば聞クべし。」(1-5)
他人にから聞くだけではなく、自分の目で見る。
そして見るだけではなく、体験することが大切だ。
体験することも見ることもできないなら、せめて聞いておこう。
ここでの「聞く」は「読書」と捉えることもできそうだね。
「今ノ世、出世間の人、多分は善事をなしては、かまへて人に識ラれんと思ひ、悪事をなしては人に知られじと思ふ。此レニ依ツテ内外不相応の事出来る。」(2-17)
人知れず、善いことをしよう。世間は逆だから困ったもの。
同じ教えがマルクス・アウレリウス「自省録」にもあった。
「学道の人、すべからく寸陰を惜シむべし。露命消えやすし、時光すみやかに移る。」(6-9)
「随聞記」には「無常迅速、生死事大」と言葉が何度か登場し、
「いつやるか?今でしょ!」的な教えが繰り返されている。
もしかしたら兼好法師も道元の教えに触れていたのかな。
「人の心元より善悪なし。善悪ハ縁に随ツておこる。・・・是レ即ち決定して心に定相なくして、縁にひかれてともかくもなるなり。故に善縁にあへばよくなり、悪縁に近づけばわるくなるなり。」(6-15)
勝負は相手との「縁」しだい、と言ったのは宮本武蔵だった。
道元は人の心は「縁」しだいで善にも悪にもなるという。
新たな良縁を探すより、既存の悪縁を斬るのが意外と重要。
それが運の良い人生を送る秘訣だよね。
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