世界のサッカークラブ経営の潮流

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横浜F・マリノスの財務諸表を振り返った際
2015年にシティ・フットボール・グループ(CFG)の出資により、
債務超過を脱した局面があったことを紹介した。

サッカーファンにとっては当たり前の話だが、
このCFGは今年、悲願のヨーロッパCL初優勝を果たした、
プレミアリーグ、マンチェスター・シティのオーナーである。

複数クラブを所有するオーナーが次々誕生

アラブ首長国連邦(UAE)が石油以外で世界に影響力を持つ手段として、
2008年にマンチェスター・シティを買収し、CFGを設立。
その後2013年にアメリカのニューヨーク・シティ、
2014年にオーストラリアのメルボルン・シティを傘下に収めていった。
いまでは傘下に収めるクラブ数は12にのぼる。
(うちマリノスを含む2クラブは筆頭株主ではない)

世界各国に複数のサッカークラブを保有する形態の先駆けが、
CFGだったように記憶おり、近年この形態が増加している。

かつてのクラブオーナーは地域に根ざす形が中心だった。

  • ソシオ(会員)によって運営されるクラブ(代表例:バルセロナ)
  • 地元の富豪が名声を得るためのクラブ経営(代表例:ベルルスコーニのACミラン)

しかしCOVID-19の襲来で経営難に陥り、買収される例が多く、
2023-24シーズンのヨーロッパ1部リーグに属する148クラブのうち、
約3分の1が何らかのグループ傘下のクラブとなっている。

複数のクラブを保有することのメリット

一番のメリットは選手の育成だろうか。

UEFAのCLやELに出場できるレベルのクラブを保有し、
他国の中堅クラブを選手育成の場として利用する。
そして高値で売却して移籍金収入を得るといった形だ。
近年はベルギーリーグのクラブが育成クラブと位置づけられている。

またFIFAの規制で1クラブがレンタルに出せる選手は最大6名。
グループクラブ間での移籍はレンタルに該当しないため、
有望な若手選手の囲い込みが可能となるメリットもある。

日本人にとって身近な例が三苫薫だろう。

2021年にブライントへ移籍したが1年目は、
同オーナーのユニオン・サン・ジロワーズ(ベルギー1部)でプレー。
1年後にブライトンへ戻り、現在の活躍に至っている。

今後の課題

今後の課題としては、同一オーナーの複数クラブが、
UEFA主催の大会に出場した場合、利益相反が起きる恐れがある
こと。
UEFAは先ごろ新たな制約を設け、該当するクラブについて、
クラブ間の移籍やスカウティング情報の共有の禁止している。

そうなると複数クラブ経営での選手育成メリットが薄まってしまう。
今後のクラブ経営がどのように変わっていくのか注目したい。

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