料理人向けの月刊誌「専門料理」。
料理をいただく立場の私にとっても、目を引く特集の月は買っている。
最新号の特集では、コース料理の価格設定の裏側が明かされている。
開業以来の価格の変遷が分かるコーナーもあり、実に興味深い。
初めは割安な価格に設定するが、それでは金銭的にも体力的にも持たない。
だから客入りを見ながら徐々に値上げ、というパターンが多いようだ。
(店によっては客の要望で高級食材をメニューに入れて高額化という変遷も)
ただレストラン経営で難しいのは、売上が次の三つの数字で決まってしまうこと。
「客数」×「客単価」×「営業日数」
営業日数を増やすのは限界があるから(ブラックな労働環境になってしまう)、
広い場所に引っ越すか、客単価を上げる以外に売上を伸ばす方法がない。
その一方で営業経費は右肩上がり。
従業員を社会保険に加入させるのは今や当たり前となり、
また労働環境改善のため、増員も必要で人件費は増加。
さらに世界的に食料価格の右肩あがりの状況が続き、
中国など新興国の台頭で食糧確保競争も起きている。
温暖化や漁師の高齢化による漁獲高減少も仕入れ値を押し上げる。
もはや客数と客単価を考えているだけでは、生き残れないのでは?
思いがけず今回、COVID-19の襲来で、テイクアウトやネット通販など、
新たな売上手段に挑戦する機会が得られたのだから、
危機が去ったら止めるのではなく、継続的に取り組む店が生き残る。
そうしたメッセージが雑誌に込められているのか分からないが、
コース価格の特集のすぐ後に「ECサイトの可能性を探る」という、
下村浩二シェフと田村浩二シェフの対談が掲載されていて興味深い。
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