二酸化炭素排出による地球温暖化については否定する説もあり、
いろいろ読んでいると、どちらが正しいのかは正直よく分からない。
ただ大気から海に溶け込む二酸化炭素が増えることで、
海洋酸性化が進み、海の食物連鎖に影響を与えることはたしかだ。
山本智之「温暖化で日本の海に何が起こるのか」で、
取り上げられている事例の差から察すると、
海水温上昇による海産物への影響はかなり研究が進んでいるが、
海洋酸性化の影響はまだまだ研究がはじまったばかりということか。
水槽内で海水を人工的に酸性化させる実験では、
大型の植物プランクトンが減少し、小型の植物プランクトンが増えたという。
植物プランクトン→動物プランクトン→小型魚→大型魚
という食物連鎖のスタートが小さくなってしまうと、
生態系の上位にする生物たちに栄養が届きにくくなり、
ブリやマグロ、サケの成長に影響が及ぶ可能性が指摘されている。
それはすなわち私たちの食卓から、なじみの魚が消えていくということでもある。
私も天ぷらを通じて、漁獲量の変容を身をもって実感するようになった。
日本の食文化を守るためには二酸化炭素排出量を減らさなければならない。
以下に同書で触れられていた海水温上昇と海洋酸性化による影響をメモ。
おもに鮨ネタを意識して取り上げられている。
海水温上昇の影響
- 大阪湾では1990年代後半からアイナメ、マアナゴの漁獲量が減り、暖かい海を好むハモが増えた。
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暖海系のサワラの本来の漁獲域は東シナ海や瀬戸内海。だが1999年以降は日本海で大量に漁獲されるように。
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暖海系のブリもかつては北海道で漁獲されることはなかったが、2016年には全国の漁獲量の約11%を占めるように。
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マアナゴは東京湾を含む関東以西の沿岸では冬場に水温が16℃より下がる時期に接岸。冬の海の温暖化により、アナゴ類の漁獲量は1995年比で約4分の1へ減少。
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2015年以降、不漁が目立つサンマは、温暖化により餌となるプランクトンの減少が打撃。将来的には今よりも小型化し、旬は秋から冬へズレていく可能性も。
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サケの回遊ルートが温暖化により北上。ロシアでは漁獲量が急増し、北海道では減少中。
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日本海側はゴマフグ、太平洋側はショウサイフグと住み分けができていたが、温暖化により津軽海峡経由で分布域が交わり、交雑種フグが急増中。雑種フグは毒性の強い部位などが不明なため、食用には危険。
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温暖化により今世紀末には日本近海からコンブが消滅する可能性。青森県では1970~80年代に比べてコンブが減少し、ワカメやツルアラメに置き換わる現象がすでに起きている。
海洋酸性化の影響
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酸性度の高い条件でもシロギスは通常通り産卵、孵化率も変わらないが、マダイは孵化率が4割近く低下。生物種によって酸性化に対する感受性が違う。今後、幅広い生物種での実験が必要
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海の酸性化は特に貝類の貝殻形成に影響大。たとえばエゾアワビの幼生は殻の形成不全を起こし、外敵から身を守ることができなくなる。
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貝類同様の石灰化生物であるウニは海の酸性化により、成長速度の低下や受精率の低下が実験で判明している。
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