ごく普通の人がなぜ過激化するのか?
大治朋子「歪んだ正義」は、このプロセスを分析した一冊だが、
投資でうまくいかない人の思考例にも似ていて興味深い。
「人は自分の見たい現実しか見ない」とはカエサルが遺した言葉だが、
やがて殺人やテロにも繋がってしまう入口はここにある。
本書では心理学の3つの理論を提示し、
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確証バイアス…信じたことを裏付けようとするバイアス
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認知的不協和理論…人間は認識した複数の要素が互いに矛盾すると不快になり、無理やり「不協和」を解消しようとして、片方を無視したりしてしまう癖がある。
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認知的完結欲求…問題に対して確固たる答えを求め、曖昧さを嫌う欲求
下記のようにまとめていた。
「「なぜ」から答えを探し始めると、私たちはその時点ですでに心の中にある「こうなんじゃないか」という漠然とした自分の考えや期待をもとに、ネットの情報でそれを「確証」し、固めて「強化」している可能性が高い。さらにすでに述べた通り、ユーチューブなどは「おすすめの動画」などを通じてできるだけ過激なものになるよう設定しており、視聴者の思い込みが強化されやすいデジタル環境もある。インターネットがない時代は悩みがあれば友達や家族に話を聞いてもらい、「思い込みだよ」とか「もっと違う角度で見なよ」と言ってもらえる機会もあったが、それも少なくなり、バイアスはより強化されやすくなっている。つまり認知バイアスと現代のテクノロジーは、相乗作用を起こす形で過激化を促す大きな牽引力になっているのだ。」
ずいぶん昔にまとめた「損切りできない投資家心理」によく似ている。
投資後にその企業の株価が下がりはじめると、
業績悪化が見込まれるような情報は見なかったことにして、
自分の期待に合う情報ばかり集めて、視野が狭くなっていく。
そんなことをしているうちに、どんどん損失が広がってしまう。
これは投資をはじめたら、誰もが通る道だと思う。
だから気まぐれに上げ下げを繰り返す株価と向き合うことは、
動じない心を身につけ、幅広い視点で物事を捉えるための修行になる。
昨年亡くなった「思考の整理学」の著者、外山滋比古さんも、
「株価に一喜一憂して人間を磨け!」という言葉を遺している。
これからも株価と戯れることで、心の修行を続けたい。
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