株式市場にお金を投じる、って行為は、将来の株価上昇を見込んでのもの。
でも、株式投資に限らず、私たちの思い通りの展開にならないのが世の常。
世の中、そんなウマイ話はなかなか転がっていないものだよね。
そう理解はしてるけど、誰もが自分の行動を否定されることを嫌うもの。
たとえば、他人からバッサリと間違えを指摘されると、
その間違った考えに固執してしまったりすることがあるじゃない?
これと同じで、値上がりすると思って投資した企業の株価が下がりはじめると、
「今は株価が下がっているけど一時的なもので、すぐに上がり始めるだろう。」
と勝手な解釈をつけて、自分自身を納得させようとする作用が働く。
人は自分の考え方に矛盾が生じて混乱してしまうと、
無意識のうちに勝手な解釈をつけて矛盾を解消しようとしてしまうものなんだ。
※心理学用語では「認知的不協和」
投資家にとって、こうした心の習性はじつにやっかい。
本当に株価の下落が一時的なもので、上昇に転じてくれれば一件落着。
でも株価の下落が止まらなかった場合は、投資家の心は頑固になり始め、
誤った情報の取捨選択に走ってしまうようになる。
企業の業績悪化が見込まれるようなニュースには見なかったことにして、
ネット上の掲示板など出所の怪しくても自分に有利な情報なら飛びつく。
第三者がその姿を見れば、なぜこだわっているのか理解できない状態。
本人は自分を正当化しようと必死なのだ。
この症状がさらに進んでしまうと、一種のカルト信仰のような状況に陥る。
自分の考えに反する情報について異常なまでに反発するようになり、
ついには政府や中央銀行の政策が悪いなどと自らの判断ミスを責任転嫁。
投資において、損切りが成功といえるギリギリの局面は、
このカルト状態に陥る前だが、渦中の本人はどこにいるのか判断できない。
自分を信じ、株価の上昇を祈り続けるも、ついには精神的にまいってしまう。
不思議なことに、この状態で保有株式を投げ売りすると、株価が反発(笑)
人間の行動はパターン化しやすいものだから、
ある投資家が損失を抱えて、自分を正当化しようと必死になっている時、
同じように悩んでいる投資家が他にも大勢いるものなんだ。
また、頑固者があきらめる時、その心は投げやり状態。
少なくない投資家が、一斉に投売りするため、一時的に下げすぎの状態になる。
正常な心理状態の投資家にとって絶好の買場となり、株価は反発する…。
投げ売り・パニックの実例
- 2003年に日経平均株価が底を打った前後、もうこれ以上の含み損には耐えられない!と金融機関などが持ち合い解消売り。
→ 関連記事: 2002~03年、日本経済の珍現象を振り返る(07/07/16) - 2009年3月には株式による損失が膨らんだ企業年金の一部が、当初決めた資産配分を無視して株式への投資比率が下がったまま放置。
→ 関連記事: 運用放棄の企業年金(09/03/22)
参考図書一覧
- 田渕直也「ランダムウォーク&行動ファイナンス理論のすべて」
- ベルスキー&ギロビッチ「人はなぜお金で失敗するのか」
- 角田康夫「人生と投資のパズル」
- 林康史「図説 マネーの心理学」
コメント
不思議なものですね。
株価のチャートだけでパニックになるのか、
それともニュース等の間接的な情報でパニックになるのか。
パニックへの対策は、タレブ氏が言うように、
トレーディングルームにチョコレートを持ち込まないことなのかもしれませんね
タレブさんのチョコレートの話、あれなんだったかな。。。
たしかに読んだ記憶がある。でもモヤモヤ。再読しよう(笑)