松岡正剛の新刊「日本文化の核心」に、
経済にまつわる言葉の語源が紹介されていて興味深い。
まずは「経済」。
この言葉はもともとは「経世済民」の省略語で、
「経世」は荘子、「済民」は書経からとられたものだった。
春秋の経世、先王の志は、聖人は議するも弁ぜず。(荘子・斉物論篇)
これなんじ有神、ねがはくは克く予を相けて、以て兆民を済ひ神の羞を作す無らんことを。(書経・武成篇)
「経」は「おさめる」、「済」は「すくう」と解釈され、
経済の語源である経世済民は「国を治め、民を救う」ことを指していた。
しかし「経済」という言葉は一人歩きしはじめ、
経世済民にかかわらない利益を獲得する活動に変容してしまう。
ものづくり大国を自負していた日本が、
マスクや防護服、人工呼吸器の調達に苦慮しているのが良い例だ。
利益をあげるために作っていたものは、経世済民につながっていなかった。
言葉のひとり歩きは「景気」や「経営」にも見てとれる。
それぞれの語源は次の通り。
- 景気…和歌に余情を盛ること
- 経営…水墨山水画の六法のひとつに「経営位置」
いまでは経営は欧米の「マネジメント」に取り込まれ、
科学的・論理的に解決すべきものとの幻想が広がっているが、
景気も経営も本来はアートから派生した言葉であったことを忘れてはならない。
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