佐藤健太郎「世界史を変えた薬」

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歴史が大きく動くとき、その裏側にはパンデミックが隠れている?
そんな例を求めて以前、歴史の転換点を演出した感染症を書き出した。

今回は感染症の治療薬が歴史をどう変えたのか?
それを知りたいなと探したら、ピッタリの一冊を見つけた。

印象的だった例をいくつかメモ。

大英帝国の礎、ビタミンC

壊血病

古くは9世紀頃のバイキングや13世紀の十字軍でも記録が残るが、
この病気が注目されたのは、航行距離が飛躍的に伸びた大航海時代。

1747年にイギリスの海軍医、ジェームズ・リンドが、
当時は珍しかった臨床試験を行い、柑橘類が特効薬になると証明。

18世紀後半にはクック船長が食事に「ザワークラウト」を取り入れ、
一人の船員も壊血病を発症せずに、世界周航を成し遂げた。

またイギリス海軍は壊血病の予防にライムジュースを船に積み、
海兵隊員は「ライミー」と呼ばれていた。

壊血病への対応が大英帝国の礎だったと言っても過言ではない。

清帝国の分岐点、マラリアの特効薬キニーネ

アレクサンダー大王やクロムウェル、平清盛というように、
古くから時の権力者の命を奪ったとされるマラリア。

その特効薬は大航海時代にペルーのキナノキの樹皮から発見され、
17世紀半ばにイエズス会の宣教師がヨーロッパに持ち帰った。

中国歴代最高の名君の一人とされる、清王朝第4第皇帝の康熙帝
在位61年の長期政権(中国史上最長)に訪れたピンチは、
40歳の頃に遠征途上でマラリア発病で一時危篤状態に陥ったこと。
康熙帝の命を救ったのはイエズス会の宣教師から献上された特効薬。

このとき見舞いに訪れた皇太子が自分の時代が来た!と喜び、
これがきっかけで皇太子はやがて廃嫡に追い込まれる。
そして代わって次期皇帝の座に就いた雍正帝、その子の乾隆帝により、
清王朝は全盛期を迎えることになる。

チャーチルを救ったサルファ剤

後の抗生物質の原型となるサルファ剤は、
1935年にドイツのゲルハルト・ドーマクが発見。

1943年12月にイギリス首相チャーチルが、
世界の首相と会談するために訪れたチュニジアで肺炎に倒れるが、
サルファ剤の投与によって、2週間後に帰国できるまでに回復。

サルファ剤は耐性菌が出現しやすかったこと、
その後にペニシリンなど優れた抗生物質が発見されたことで、
今では忘れかけられた存在になっている。
しかし感染症治療や抗生物質問題の原点として歴史を変えた薬である。

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