一流の料理人の調理技術を紹介する月刊誌「専門料理」。
その2020年8月号の特集「以後の料理人、以後のレストラン」がおもしろい!
「以後」というのはもちろんCOVID-19の感染拡大以後のこと。
最も打撃を受けている飲食業界の一流の料理人たちが、
料理人ではなく経営者の立場で語っているのがとても興味深い。
第一波には対応できたというカンテサンスの岸田周三さんは、
「あえて、今回対応できた理由を挙げるとしたら、普段からスタッフを雇うことに対して厳しい責任感を持っていることだと思います。経営者は、スタッフの人生を担っている。なので、何があっても数ヶ月間は持ちこたえられるというできうる限りの資金面の準備はしています。」
かねてより日本企業は内部留保を溜め込みすぎと非難されてきたが、
今回、内部留保に救われたところもあるのではないだろうか。
「人を雇う立場にいるなら、職人肌で料理だけやっていればいい時代ではないと思います。自分自身について考えても、料理が好きなので、どうしてもそちらにエネルギーを割いてしまいがち。だからこそ、経営や労働環境の向上のためにも時間をかけ、勉強を続けるよう意識しています。」
そして臨時休業の間は経営書を読みあさっていたという。
成功する料理人は経営者としても優秀である必要があるということだね。
たしかに料理人とオーナーが別々だと、どんなに美味しい料理が作れても、
食材にかける費用等で対立が起きて、追い出されるのは料理人だからなぁ…。
特集では日本はもちろん、海外のシェフのコメントも掲載されているが、
フランスのオリヴィエ・ロランジェさん(レ・メゾン・ド・ブリクール)の話が印象的。
「明日の料理は、人間にも地球にもよきものでなくてはいけない。そしてそれを実現すべく、料理人は常に第一線で活動するべきなのです。地球上のどこにいるにせよ、食の崇高さを再び啓蒙しなくてはいけません。そしてそれは、自分の店や地元の食材に対してだけでなく、自分がいる地域全体に対して働きかけていかなくては。地域の日々の食全体に対して、一種政治的な役割を担っていくべきです。食というものは、社会の中心にあるものなのですから。」
社会に対して広い視野を身につける機会はやはり日々の食事なのだと思う。
そこをおろそかにして、これからの社会を読み解くことなどできないのだ。
コメント