ラ・ロシュフコー(1613-80)は17世紀フランスの名門貴族。
彼が遺した散文集「箴言集」は手元に置いておきたい逸品。
散文集は自分なりに編集・解釈できるからおもしろいよ。
この時期のフランスにはおもしろい人たくさんいる。
デカルト(1596-1650)、パスカル(1623-62)も同時期だ。
そんな国内で哲学者が議論を交わした時代背景の反映してか、
「理性」によって真理を導くデカルトの思考法に言及しているような…
われわれはあくまでも理性に従うほどの力は持っていない。【42】
情熱はしばしば最高の利口者を愚か者に変え、またしばしば最低の馬鹿を利口者にする。【6】
心の健康も、当てにならないことに欠けては体の健康と変わらない。だから人は、たとえ情熱から縁遠いように見えても、元気な時に病気になるのと同じに、いつ情熱にとりつかれるかわからないのである。【188】
ロシュフコーは人は理性ではなく情熱に支配されていると考え、
愛の喜びは愛することにある。そして人は、相手に抱かせる情熱によってよりも、自分の抱く情熱によって幸福になるのである。【259】
恋ほど自分自身への間が強く支配する情念はない。そして人は常に、自分の心の安らぎを失うくらいなら、恋する相手の心の安らぎを犠牲にしようと決めているのである。【262】
人の情熱と不可分なものが「恋」や「愛」であると捉えていたようで、
恋愛にまつわる名言も数多く残している。
変わらぬ恋とは一種の絶え間のない心変わりである。つまりわれわれの心が、愛する人の持っているすべての美点に、ある時はここが好き、ある時はあそこが好きというふうに、次々と惚れこんでゆくのである。【175】
少しも尊敬していない人を愛すのは難しい。しかし自分よりはるかに偉いと思い人を愛することも、それに劣らず難しい。【296】
愛したい思いを抑えるために自分の心に加える強制は、しばしば、愛する人のつれなさより辛いものである。【369】
真の恋がどんなに稀でも、真の友情よりはまだしも稀ではない。【473】
こうして情熱や恋愛に振り回されるわたしたちの人生は、
われわれの気分が穏やかであるか荒れるかは、生涯の重大事によってよりも、むしろ毎日起きるこまごましたことの運びが、思わしく行くか行かないかによって左右される。【488】
と落ち着かないものになりがちだから、
人は決して自分で思うほど幸福でも不幸でもない。【49】
と気付きなさいよ、と説いている。
この最後の言葉は何かに迷ったときに思い出したいものだ。
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