古代種を失えば、その食物は消滅する?/ダン・サラディーノ「世界の絶滅危惧食」

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動植物の大量絶滅の話を見聞きするようになって久しいが、
なぜか頭の中で食べものと繋がりにくいのは私だけだろうか。
でも最近ようやく、天ぷらを通じて異変が身近になってきた。

世界の状況をより深く学ぶために、興味深かったのが、
絶滅が危惧される食物の品種等やそれを使った食文化をまとめた、

食料の生産効率を追求するため、単一品種に頼っていると、
伝染病が起きたときに、食料供給網が一気に崩壊する恐れ
がある。
この問題については、これまでも学んできた。

今回、本書を通じて学んだのは、
見向きもされなくなった品種改良をされる以前の古代種は、
気候変動や疫病への耐性を有している
こと。

たとえばトルコ東部の限られた農家が栽培する「カヴルジャコムギ」。

現代の小麦よりも2倍の高さ(人間の肩ぐらいの高さ)に育ち、
一本一本の色、形、粒の大きさが微妙に異なっている。

現代の小麦の天敵「赤カビ病」の原因となる真菌は、
畑の土に潜伏し、降雨時に跳ね上げられた水滴に乗って、小麦の穂に付着する。
穂が高ければ、届かず赤カビ病にはかからないが、収穫作業は大変。
そして万一感染しても、一本一本が微妙に異なるため、感染は広がらない。
でも二度挽きしないと殻と実が分けられず、一粒一粒の色も異なる。

疫病には強いが生産効率が悪いため、農家は他の品種に切り替えてしまう。
でも、こうした古代種には疫病に強い品種を開発するためのヒントがある。
もしも失われてしまうと、将来的に世界から小麦が消滅するリスクにつながるのだ。

世界の絶滅危惧食
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