民主制、寡頭制、独裁制。理想の統治体制はどれだ?/ヘロドトス「歴史」

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前回に引き続きヘロドトス歴史」の再読メモ。
岩波文庫・上巻での読みどころは特に次の2箇所だと思う。

リュディア王国のクロイソスがペルシアに敗れて以降は、
アケメネス朝ペルシアを中心に話が展開していく。

リュディアを滅ぼしたキュロス王、その息子、カンビュセス王と続いた後、
カンビュセス王の弟の偽物が王位に就くという政治的混乱が訪れる。
その陰謀を七人の賢者が打ち破り、今後の統治体制を議論する。
候補となったのは、民主制、寡頭制、独裁制の3つ。

統治体制の話として読むと縁遠く感じるかもしれない。
企業の経営のあり方に置き換えて、読み進めるのもいいだろう。

オタネスの主張(民主制を支持)

「なんらの責任を負うことなく思いのままに行なうことのできる独裁制が、どうして秩序ある国制たりうるであろう。このような政体にあっては、この世で最も優れた人物ですら、いったん君主の地位に坐れば、かつての心情を忘れてしまう。現在の栄耀栄華によって驕慢の心が生ずるからで、さらには人間の生得の嫉妬心というものがある。このふたつの弱点をもつことにより、独裁者はあらゆる悪徳を身に具えることになるのだ。彼にあまたの非道の行為があるのは、ひとつには栄耀に飽き驕慢の心を起こすからであり、ふたつには嫉妬の念の仕業である。」

「大衆による統治はまず第一に、万民同権(イソノミア)という世にもうるわしい名目をそなえており、第二には独裁者の行なうようなことはいっさい行なわぬということがある。」

メガビュゾスの主張(寡頭制を支持)

「オタネスが独裁制を廃するといったのには私もまったく同意見であるが、主権を民衆に委ねよというのは、最善の見解とは申せまい。なんの用にも立たぬ大衆ほど愚劣でしかも横着なものはない。したがって独裁者の悪虐を免れんとして、狂暴な民衆の暴戻の手に陥るというがごときは、断じて忍びうることではない。」

「われらは最も優れた人材の一群を選抜し、これに主権を賦与しよう。もとよりわれら自身も、その数に入るはずであり、最も優れた政策が最も優れた人間によって行なわれることは当然の理なのだ。」

ダレイオスの主張(独裁制を支持)

「最も優れたただ一人の人物による統治よりも優れた体制が出現するとは考えられぬからで、そのような人物ならば、その卓抜な識見を発揮して民衆を見事に治めるであろうし、また敵に対する謀略にしても、このような体制下で最もよくその秘密が保持されるであろう。」

「寡頭制にあっては、公益のために功績を挙げんと努める幾人もの人間の間に、ともすれば個人的な激しい敵対関係が生じやすい。各人はいずれも自分が首脳者となり、自分の意見を通そうとする結果、たがいに激しくいがみ合うこととなり、そこから内紛が生じ、内紛は流血を呼び、流血を経て独裁制に帰着する。」

「民主制の場合には、悪のはびこることが避けがたい。さて公共のことに悪がはびこるさいに、悪人たちの間に生ずるのは敵対関係ではなく、むしろ強固な友愛感で、それもそのはず、国家に悪事を働く者たちは結託してこれを行なうからだ。このような事態が起こり、けっきょくは何者かが国民の先頭に立って悪人どもの死命を制することになる。その結果はこの男が国民の讃美の的となり、讃美されたあげくは独裁者と仰がれることになるのだ。」

以上のような議論の末に7人中4人が独裁制を支持。
ダレイオスが王として即位することになる。

ダレイオスが着手するギリシア侵攻(ペルシア戦争)が失敗に終わるのは、
ペルシア(独裁制)・ギリシア(民主制)の統治体制の違いであるという、
ヘロドトスの主張へつなげる伏線と言えるだろうか。

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