リスク管理は破局に無力/ジャン=ピエール・デュピュイ

リーマンブラザーズが破綻した日に、これは面白いことになった♪
と投資の分野で研究者として名を残す!と暴走し、大学院へ進学。
でもそこで出会った学問は、より良い未来の創造に対して無力であり、
むしろ未来の偶然を「想定外」と嘆くための方法が語られていた。

満足に得るものがなく卒業を迎えた頃に東日本大震災が起きた。
あの惨劇によって私のモヤモヤの2年間が編集し直されることになる。

リスク管理社会の崩壊

近年私たちを襲う災難の大半はこれで説明できるのだと。
サブプライムローン問題に始まり今なお続く金融危機と、
3.11に続く原発問題の根底にあるものは一緒だったのだ。

私のように超・遠回りしなくても多くの日本人は気付いているみたい。
未来に起きる破局に対してリスク管理は無力と説く、
科学哲学者ジャン=ピエール・デュピュイが注目されているから。
震災後に次々と著作が翻訳され、東大で来日講演も行っている。

一番最初の講演録を読んで面白いと思ったら著作もいかが?
ちなみに私は「ツナミの小形而上学」を読んでみたよ。


リスボン、アウシュヴィッツ、広島、ニューヨーク、京都…。
歴史上の、そして未来に起きる破局の象徴となる都市をめぐる。
リスボンは1755年の大地震と大津波、ニューヨークは9.11、
そして京都は未来に起こるであろう地球温暖化による破局を示す。
本書の「ツナミ」とは、リスボンに始まるすべて破局の象徴なのだ。

破局に潜む「悪」はリスボン後のルソーの主張によって、
神が自らの「善」を肯定するために自然に潜ませた「悪」ではなく、
人の心が生み出した「道徳的な悪」と認識されるようになる。

やがて道徳的な破綻により生まれた「核の脅威」に対し、
人間自身が時代遅れの存在となってしまう。
今後起きることが予測される温暖化による破局も含め、
誰の責に帰すこともできない「システム的な悪」の降臨を示す。
そしてこの「システム的な悪」はリスク管理社会とセットになっている。

予防原則は何が私たちを脅かしているのかとしいう標的を見誤り、私たちが確信を持てないことが問題だというのに私たちの無知ばかりを指弾し、結果的に私たちの生存のための戦いを脅かす最悪の武器になってしまう。」P21

私たちの行く手を阻む大災禍は、人間の悪意やその愚かしさの結果と言うよりも、むしろ思慮の欠如の結果なのだ。・・・そこでの悪は道徳的でも自然的でもない。その第三種の悪を、私はシステム的な悪と呼ぼう。」P119

でも私にはデュピュイが示した解決策が理解できない。

破局の時代に適した用心の基礎となるべき形而上学は、破局の後に続く時間に「みずから投影」し、その破局の中に「必然であると同時にありそうにない」出来事を遡及的に見出すような形而上学である。」P15

過去と未来がループするような時間感覚なのだろうか。。。