九鬼周造の「恋と偶然」つながりで出会った一冊。
フランスで20万部以上売れた哲学書なんだとか。
70歳を超えても愛で世界を語るとはさすがフランス。
私たちは定義づけのような同一性に基づく整理法で、
世界を秩序立てて捉えるような思考回路になっている。
でもそれがあまりいきすぎて、がんじがらめになると、
驚きや感動が失われ、つまらない人生になってしまう。
そんな論理的な思考による心の束縛を解き放つのが愛。
「愛は、それ自体として見ればほとんど何ものでもない、ひとつの出会いを発端として始まり、わたしたちは単に同一性によってばかりではなく、差異によって世界を探求することができるのだということを知るのです。」
「もし愛が、相互の利益の交換とは考えられず、利益を生む投資としてかなり前もって計算されたものでないとすれば、愛とは真に、偶然に対して寄せられた信頼なのです。愛はわれわれを、差異とは何かということの根本的経験の領域に、そして結局、ひとは差異の観点から世界を探求できるのだという考えへと向かわせるのです。」
恋から偶然を説いた九鬼と似たような話の展開。
偶然への驚きから世界の探求が始まるのであり、
その第一歩となるのが恋の始まりなのだ。
日本の古典は大ざっぱに言うとテーマが「恋」ばかり。
徒然草でさえも微妙に恋が見え隠れしていたりする。
「日本にはまともな哲学・思想を説いた古典がない!」
なんて考え方は投げ捨てるべきだね。
「愛すること、それはあらゆる孤独を超え、世界にあって生存に活力を与えようとするものすべてに関わることです。わたしにはわかります。この世界とは直ちに、他者とともにあることがわたしに与える幸福の源泉なのです。「あなたを愛している」という言葉は、世界にはあなたというわたしの幸福の源泉がある、という意味を持つのでしょう。」
なんて美しい結論でバティウの話はおしまい。
哲学的な側面を踏まえて、和歌を編集してみなきゃ。
コメント