思考とは新皮質の座標系を歩くこと/ジェフ・ホーキンス「脳は世界をどう見ているのか」

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1996年に携帯情報端末“Palm”を世に送り出したジェフ・ホーキンス

若い人は知らないだろうけど、スマホが登場する以前の世の中は、
携帯電話と携帯情報端末、携帯音楽プレイヤーが別々に存在したの。
その中の情報端末開発で有名だったのがPalm社だった。

ホーキンスは脳機能の総合的理論を研究を望むも、道が見つからず、
いったんシリコンバレーで働き、事業で築いた資産を投じて、
自ら神経科学の研究所を設立するという、すごい経歴の人。
そんな超天才が神経科学と人工知能について書いた一冊が、

著者の研究対象は、進化の過程で古い脳に覆い被さった新皮質
本能的な欲望や感情をつかさどる古い脳に対して、
新しい脳(新皮質)が私たちの知性や知能の源となっている。

脳が世界を認識するにあたり、その基礎となるのは、
物体の位置とその変化を記述する「座標系」であると説く。
その座標系は新皮質を構成する約15万の「皮膚コラム」が作る。
そしてコラム間の投票によって、私たちの知覚が生み出されるという。

たくさんの皮膚コラムそれぞれが予測演算を行うから、
脳はひとつではなく「1000の脳理論」という表現になるわけだ。

こうした脳理論を踏まえて著者はAIに言及する。
人類が目指している汎用人工知能を作りたければ、
人間の新皮質をモデルにしたAIを作らなければ実現不可能。

このモデルには生命の基本機能を制御する古い脳が含まれない。
だからAIに価値観や感情、目的が生まれることはなく、
AIが人類滅亡の脅威となるとは考えられないという。

むしろ私たち自身の古い脳がつかさどる欲望や感情こそが脅威。
知能を手にしたにも関わらず、古い脳に行動を支配されること。
テクノロジーの誤った使い方で、核兵器や気候変動を生んでいる。

人類が地球にできるだけ長く生き延びられるかどうかは、
新旧どちらの脳が私たちの行動を支配するかにかかっている。

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