ニューヨーク・タイムズの記者が書いた
副題は「世界経済をぶち壊した億万長者たち」。
ダボスマンの意味するところは、
- 当初…「世界経済フォーラム年次総会」(通称、ダボス会議)に毎年出席するため、スイスのリゾート地、ダボスに出かける者たち。
- 現在…地球をまたにかける億万長者たち。
著者はダボスマンを地球規模の略奪者と位置付けて、
彼らの悪の側面を様々な角度から解き明かしてゆく。
ダボスマンたちは自らの地位を正当化するため、
富の独占に反対することは資本主義に反する考え方であり、
またビジネスを理解できない馬鹿者の主張である、
という思想を世界に刷り込んできた。
そして富裕層への課税強化は無意味であり、
自らの善行こそがより良い未来をもたらすとうそぶく。
代表例のひとつはステークホルダー間の対話を強調すること。
「ステークホルダーという単語はダボスマンにとっての魔法の呪文のようなもので、その言葉を発すれば高尚な理念の持ち主であることを保証されるのだった。話し手の関心が、むき出しで株主の利益を追求する者より、ずっと気高い事柄に向けられているということの証左なのだ。」
さらに慈善活動と言ってもダボスマンによる寄付総額は、
資産総額に比べれば微々たる金額であり、
ステークホルダー資本主義や慈善といった情けを受け入れよ、
と上から目線で言っているも同然なのだ。
ダボスマンによる様々な収奪の事例が示される中、
初めて気付かされたのが、投資家にはおなじみのETFの話。
中央銀行がETF買付で市場安定化を図ると、その運用報酬が、
金融機関に公的資金を注入するようなものでは?という指摘。
たとえば2000年春のFRBによる緊急支援策。
FRBが債券市場を買い支えるにあたって債券ETFを利用。
その支出先の半分近くがブラックロックのiShars ETFだった。
たしかにブラックロックETFから得られる運用報酬は、
事業全体の利益規模からするとたしかに小さなもの。
しかしブラックロックはさらなる収奪の手札を持っていた。
FRBの動向が機密情報とされるのは、買付からたった2週間の契約。
これではFRBの内部情報を利用して投資ができるようなものだ。
こういった切り口のパッシブ運用の闇には初めて気付かされた。
投資の世界にいると、ステークホルダー資本主義やETFに対し、
悪い面ではなく、良い面に目を向けてしまいがち、ということか。
頭の使い方の浅さを痛感させられた一冊だった。
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