産業革命とは何だったのか?/長谷川貴彦「産業革命」

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「産業革命以来の○○」「第○次産業革命」…等々、
イギリスの産業革命を起点にした記述を多く見かけるが、
そもそも世界史・経済史における産業革命の位置付けを知らない。

小川幸司&成田龍一「世界史の考え方」を読んで、そう実感したので、
長谷川貴彦産業革命を手に取ってみた。
山川出版社の歴史ブックレットシリーズはコンパクトで読みやすい!

まず産業革命という概念の変遷は、

  • フランス人経済学者アドルフ・ブランキ(1798~1854)が、フランス革命を叙述する中で、イギリスの類似の事例として同時代を「産業革命」と名付けたことに由来。

  • イギリス人自身は「革命」ではなく「進歩」や「発展」と呼んでいたが、アーノルド・トインビーの「英国産業革命論議」(1884)により、イギリスでも「産業革命」という概念が一般化。

  • 20世紀前半には、産業革命は世界史の大転換という考え方への疑問が提示される。ジョセフ・シュンペーターは長期の景気循環に過ぎないと説き、ジョン・クラパムは経済統計の面では劇的な変化はなかったと指摘。

  • 第二次大戦後には再びその革新性が見直され、1960年代の英国病と呼ばれるイギリスの経済停滞の時期にはそれが否定されるという、革新か?連続か?で行ったり来たり。

  • 現在は「エネルギー革命(有機物依存から鉱物依存へ)」や「勤勉革命(労働者の考え方の変化)」を切り口に産業革命を再評価する研究が生まれている。

すべての歴史は現代史」とはよく言われているように、
その時々の社会の状況によって、歴史像が変わっていく。

次に著者による産業革命分析

  1. 産業革命はなぜイギリスではじまったのか?

    • 石炭資源が都市の近隣にあり、大きな経済市場である新大陸アメリカに近かった

    • 植民地と大西洋三角貿易からあがる莫大な利潤

    • 巨大な帝国が支配するアジアと違い、ヨーロッパは競合する国家が乱立し、経済発展や軍事力強化で競争があった

    • イスラム社会が宗教的な寛容性が失われる一方、ヨーロッパは宗教と科学が分離され、数学を基礎として科学技術が発展していった

  2. 産業革命期は人類史にとっての分岐と言える側面はなに?

    • 有機物依存(人力・動物力・木材)から鉱物依存(石炭)へ移行したこと(エネルギー革命)

    • 農業技術の革新と大規模農場の発達により、製造業へ労働力が移動したこと(農業革命と都市化)

    • 労働者が贅沢品を求めて長時間労働に耐えるようになったこと(勤勉革命)

最も目を引いたのは勤勉革命により「朝食」の概念が生まれたこと。
長時間の工場労働に耐えるには、

  • パンと砂糖をとって肉体労働のエネルギー源とする
  • コーヒーや紅茶に含まれるカフェイン効果で覚醒させる

といった必要性から朝食をとるようになったという。
朝ご飯はパンとコーヒーという起源が産業革命だったとは!

ただしイギリスのGDPや実質賃金は上昇している一方で、
また1800~1850年の男性の平均的な身長が低下していることから、
産業革命渦中の労働者が幸福だったかというと…

あとはやはり気になるのはエネルギー革命。
産業革命以前の人口と産業の成長は、土地の生産性が成長の限界だった。
衣食住・燃料・動力が主に植物や動物に依存していたから。
そこに現れた石炭という鉱物資源によって、この足かせが外れることになる。
今ふたたびこの足かせがはめられる時代が近づいているわけで…。

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