がんは進化のプロセス/アシーナ・アクティピス「がんは裏切る細胞である」

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アシーナ・アクティピス「がんは裏切る細胞であるは、
「癌(がん)」に関する最新の知見がまとめられた興味深い一冊。

  • がんは多細胞という性質に特有の問題
  • ひとりの人間の一生の間に繰り広げられる細胞の進化の数は、人類の進化の歴史全体を通して生じたものより多い
  • 細胞の共同体が大きくなればなるほど、それを搾取しようとする裏切り者(がん)から狙われやすくなる

がんは体の中で起きる進化の必然という視点に立つと、
制御不能であることが、がんの本質ということになる。
だから「がんと闘う」ではなく「共に生きる」治療法を研究に注力すべき、
というのが著者の主張だ。

つまり進化の果てに滅びる生物がいるように、
がん細胞の集団が体内で進化したあげくに袋小路に入り込まないよう、
うまくコントロールする方法を見つけなければ、ということだね。

なんとなく思い出すのは約20年前、中学の保健体育で紹介されたHIVは、
感染したら長くは生きられない死に至る病という位置づけだったと記憶している。
でも今では完治はできないものの、一般の人と寿命は変わらなくなっている。
がん治療の方向性もHIVと似たようなものになるということだろうか。

またがんの発症と生殖能力に関連性が見られる点には驚かされた。

生殖細胞系列(始原生殖細胞から卵子・精子に至るまでの生殖細胞の総称)の段階で、
BRCA遺伝子(DNA修復に関与する遺伝子)に変異が生じていると、
その細胞から生まれた子は、乳がんや卵巣がんにかかるリスクが高い。
しかし不思議なことに、BRCA遺伝子の変異保因者の女性の方が、
子供のいない割合が低く、流産する割合も低いという統計データがあるという。

こんな話からも、がんとは「敵」ではなく「共存」の関係性を目指すしかないのだろう。

がんは裏切る細胞である――進化生物学から治療戦略へ
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