こんなにいろいろ学べてたった2,000円程度でいいの?
というのが率直な感想の「食」の最先端を紹介した一冊、
食文化も調理家電も日本は世界最先端…という思い込みはiPhone前夜!
そんな警告をいち早く発したいという想いがあったからなのか、
編集の工程を飛ばして出版したようで、書籍としての完成度はイマイチ。
だが「食」にまつわる新しい産業のテーマや担い手を学ぶことができて満足。
食に対する関心は極めて高いものの、これまで成長産業の印象はなく、
投資対象として選択肢が少なかったがこれからは違う。
自分が興味を持って追い続けられる分野の時代が来るのは嬉しい♪
ワクワクさせてくれる一冊だった。
統計データが示された部分を中心に書き出しておくと、
フードテックの可能性
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フードテックの市場規模…2025年までに700兆円規模(スマートキッチンサミット2017で創設者のマイケル・ウルフが発表)
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現代の食に対してお金を払っても解決したい不満を抱えている層は日本、イタリア、アメリカで20~30%程度いる(シグマクシス調査「Food for Well-being調査2019」)
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約80億人の人々が1年間に食事をする回数は約8兆回。その1~2割の回数でわずかでも追加支出が発生すると考えると100兆円クラスの市場は簡単に生まれる。
食にまつわる社会課題の大きさ
The Food and Land Use Coalition調査2019年9月
- 世界のフードシステムの年間市場価値は10兆ドル。しかしフードシステム自体が生み出す健康・環境・経済へのマイナスの影響は12兆ドル。
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このまま何もしなければ12兆ドルのマイナスは、2025年までに16兆円までふくらむ。
代替肉はなぜ必要か?
これまで先進国が堪能してきた牛肉の美味は、
牛を育てるために必要な資源を考えると、地球への負荷が大きすぎる。
- 人間全体で1日に水200億リットル、食料10億トンが必要
- 家畜としての牛15億頭で1日に水700億リットル、食料600億トンが必要
1人が一生で必要な植物を育てるのに必要な農地の広さ
- ヴィーガン(完全菜食主義者)…4,000㎡
- 卵や乳製品を食べるベジタリアン…12,000㎡
- 平均的な肉食のアメリカ人…72,000㎡
ハンバーガーが国民食で肉食中心のアメリカでは健康面でも関心が高く、
すでにインポッシブルフーズやビヨンドミートがビジネス拡大中。
料理に負のイメージを持つ日本人
自宅で料理をする理由の日・米・伊(シグマクシス調査「Food for Well-being調査2019」)
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日本では「食費を抑えるため」が突出して高い(53.2%)。アメリカ(43.4%)、イタリア(28.9%)
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アメリカ、イタリアは「家族とコミュニケーションを取るため」が4割超、「料理自体に関心があり、知識を身につけられるため」が約35%。しかし日本は両方とも2割に満たない。
高度経済成長期に「家事=負担・時間を奪うマイナスなもの」と位置づけ、
日本の家電メーカーが家事を楽にするための製品で世界を席巻した。
こうした流れの中で調理に対しても負のイメージがついた?
「買い物」「レシピ」「調理」が分断されているから料理は面倒。
ならばそれの一連のコードをデータでつないでしまえばいい。
食領域のGAFAを狙うビジネス(キッチンOS)が立ち上がってきている。
外食産業を変える4つのトレンド
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フードロボットがコロナを機に人手を介さない調理でさらに注目される
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小型の無人レストランとしての自販機
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デリバリー&ピックアップ
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ゴーストキッチン(店舗を持たないデリバリー専門レストラン)・シェア型セントラルキッチン
これからの外食産業、とくにレストラン経営において、
元「TIRPSE」シェフ、田村浩二氏のインタビューでの発言が印象的。
「従来の飲食店やレストランは、「客数」「客単価」「営業日数」という、たった3つの要素で売り上げのトップラインが決まってしまうモデル。そのため、店のサイズや数、価格設定が変わらない限り、10年後も売り上げの天井は同じです。しかし、今回の新型コロナ禍を経て、考えようによっては固定店舗の売り上げに加えてテークアウトやデリバリー、ネット通販といった新たな収益を得る道筋が見えてきました。今まで10年後の収入が変わらない人生だったのが、努力次第で変えられる。これは、レストランビジネスの収益拡大を阻んできた”天井“が、突如としてなくなったことを意味します。」
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