仮想世界の経済圏拡大で地球の限界を超えられる?/ジェレミー・ベイレンソン「VRは脳をどう変えるのか?」

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ひょんなことからVRに関心を持つようになり、関連図書を探していたところ、
ジェレミー・ベイレンソン「VRは脳をどう変えるのか?」と出会った。
著者は認知心理学の観点から長年VRを研究している人物。

VR内での経験は現実の経験と同様の生理学的反応を脳にもたらし、
またVRを使うと自然と身体全体が動くため学習効果が高まるのだとか。

スポーツのトレーニングやPTSDの治療にVRが有効なのは実証済みだが、
もちろん負の側面があることを忘れてはならないと著者は警告する。

現実逃避に関して言えば、心理面への影響は過去の例の比ではない。

「非現実世界への逃避が社会から白い目で見られることはデジタル時代より前にもあった。テレビが大衆のアヘンだと馬鹿にされるよりはるか以前、小説を読むことに社会がヒステリックな不安を抱いた時代もあったし、プラトンは古代アテネにおける詩の流行を不安視していた。この事例は最先端メディアに対する社会の発作的恐怖心が間違っていることを示すためメディア史の学生によく引用される。だが私はVRだけは別格ではないかという不安を感じる。とりわけその心理面に与える影響の大きさから見て、他のメディアとの違いは程度の差ではなく、別の種類の物と考えるべきではないかと思う。」

本書の中でVRの善悪様々な可能性が示されるが、
一番興味深かったのは仮想世界に経済圏が生まれることで、
経済成長が地球の限界という壁を超えられることだろうか。

「人々は現実世界よりも少ない金額でリッチな無駄遣いを楽しめる仮想世界で巨大な経済圏を形成し、現実世界の富がそこで大量に生まれている。もしアバターの装飾品や、象徴に過ぎないステータスのために人々が大金を投じるのが奇妙に感じられるなら、ちょっと立ち止まって周囲を見回してみることをオススメする。現実世界でも人々はなんと意味のない消費行動をしていることか。それは現代経済の特色とさえ言える。問題は、現実世界で派手な消費をすると現実のコストが伴う点にある。化石燃料の無駄遣い、山積みのプラスティックゴミ、大海原を漂うゴミベルト、実例はいくらでもある。このように考えると、実は仮想世界での交流に人々がのめり込むことは、映画や小説で描かれる終末的世界のように恐ろしいものではなく、むしろ現代社会にとって大きなメリットであるのかもしれない。」

長期投資は経済成長が持続することを前提としているが、
一方で私たちの経済活動が地球環境に与える影響は大きく、
過去と同じようなリターンを得られる確証は揺らぎはじめている。

もし現実世界での経済活動の一部を仮想世界に置き換えることができるなら、
経済成長の限界という懸念から解放されるのかもしれない。

ただVRにより通勤や出張という概念がなくなる未来は容易に想像でき、
日本の主たる産業である自動車が打撃を受けることを考えると、
日本が仮想世界の経済成長の波に乗れるのか、やや不安に感じる部分もある。

VRは脳をどう変えるか? 仮想現実の心理学
ジェレミー ベイレンソン
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