さよならESG投資。次はインパクト投資に期待。

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先日、経済誌の取材で尋ねられて初めて知ったのだけど、
先月設定された「グローバルESGハイクオリティ成長株式ファンド」が、
投資信託の当初設定額で歴代2位となる金額を集めたそうな。

グローバルESGハイクオリティ成長株式ファンドの憂鬱

ESG投資が個人投資家にも浸透した証ですね、みたいな感じで問われ、
この投資信託の情報を調べて、ちょっと待ってこれ変だよ!となった。

  • 販売会社がみずほ系の3社のみ(証券・銀行・信託銀行)
  • 販売手数料が3.0%(税抜き)

みずほグループが販売手数料で100億円超の荒稼ぎしたということでは!?

国内の運用会社は、少なくとも株式のアクティブ運用については、
ESGを考慮していないところなんて今は存在しないはず。
だからあえてESGを冠した投信を設定するのはおかしな話で、
既存の投信の報告書でESGを語ればよいだけのはずなのだ。

事実これとほぼ同じ名称の投資信託には2016年9月に設定された
グローバル・ハイクオリティ成長株式ファンド」があり、
ESG付きと無印の組入上位10社は8社が同じ。

上場企業があまたある中でこの一致は、あえてESGを宣言せずとも
「通常の株式投資=ESG投資」の時代であることの証と言える。

そしてネット証券(SBI・楽天・マネックス)であれば、
タイトルにESGが付されていない投信は販売手数料が無料だ。
なぜ手数料を払ってまでESGの投信を買う必要がある?

よって旧態依然の販売会社主導のビジネスモデルの枠内で
設定された投信であることを疑わざるを得ず(=販売手数料目当てで顧客不在)、

という結論に達するわけだ。

設定当初に多額の資金を集めた投信のその後

また当初設定で個人投資家から多額の資金を集めた投信が、
その後どうなったか、グラフにするととても分かりやすい。

節度を失った仕組みは、やがて暴走するか形骸化して消えゆくのが道理。
なんとなく今回の投信がESG投資の終わりを告げる鐘のように感じるのだった

これからはインパクト投資

7月に環境省の委員会から「インパクトファイナンスの基本的考え方」が発表。

これまで「インパクト投資」と言っても定義がよく分からなかったが、
この冊子の7ページで示され、今後の展開に期待している。
※投資だけではなく融資も含むため「ファイナンス」という表題になっている。

本文書における「インパクトファイナンス」とは、次の1~4の要素全てを満たすもの をいう。

  1. 投融資時に、環境、社会、経済のいずれの側面においても重大なネガティブインパクトを適切に緩和・管理することを前提に、少なくとも一つの側面においてポジティブなインパクトを生み出す意図を持つもの
  2. インパクトの評価及びモニタリングを行うもの
  3. インパクトの評価結果及びモニタリング結果の情報開示を行うもの
  4. 中長期的な視点に基づき、個々の金融機関/投資家にとって適切なリスク・リターンを確保しようとするもの

個人的には3番目の要素の「情報開示」にかなり期待。

ESGと言われても一般市民には中身がよく分からない、というのが正直なところ。
ESG関連の投資信託の報告書を読んでもピンと来ないものばかりだし、
組み入れ銘柄も有名企業ばかりなら、インデックスファンドでいいや、となってしまう。

今回示された定義にそって、その投資が社会に対してどのような好影響をもたらしたのか?
ここが情報開示されたインパクト投資関連の投信が増えていくのなら、
投資の社会的意義が広く認知されるきっかけとなることだろう。

これからはESG投資ではなくインパクト投資に期待したい!

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