外山滋比古さんの投資哲学「儲けようと考えない投資」

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今月はじめに大ベストセラー「思考の整理学」の著者、
外山滋比古さんが96歳で亡くなった。

外山氏が投資歴60年を超える個人投資家であることを知ったのは2年前。
その後、投資家が記した本との視点で著作を読み直してきたが、

訃報を受けて著書のリストを見直していたところ、
お金をテーマにした本が2018年末に出版されていたことを知り、手に取った。

儲けようと考えない投資

私はまだ投資歴20年にすぎないので足下にも及ばないが、
これが投資で一番大切なことだよね、と再認識した一節。

「何十年も株投資を続けていると、「これは良さそうだ」とか「これは危ないんじゃないか」というレベルまで直感が研ぎ澄まされてくるかもしれない。こうなると、大変愉快になる。さらに、『あまり儲けなくてもいいや』と考えるところまでいくと、面白くなる。60年以上も株投資を続けている人間として、もうそんな気持ちになっている。」

「なにか禅問答のようになってしまうが「儲けよう、儲けよう」と思うから、結果的に損が多くなる。あんまり考えこまずに買うのでも、十分に面白い。持ち金が大幅に減らなければいいや、配当で得られる金だけで十分だ。さらにおもしろいのは、そういう心境に達すると、結果的に、大きな儲けが出ていたりもするのだ。」

私も投資をはじめて間もない頃は、株価の上下を目で追うばかり。
結局、大損して「勉強が足りなかったかな?」と反省。
そしてFP、簿記、税理士と資格試験を使って勉強をはじめ、
経済や会計、経営を一通り学んだ後に、心理学・哲学・歴史と関心を広げた。

以前この関心の広がりを図解したことがあるが、
「投資」を過激に追求するうちに、次なる中心テーマ「日本」に出会う。

こうして投資をきっかけに様々なことを学び、世の中を見る目が広がり、
それを楽しんでいるうちに仕事でも投資でも儲けが積み上がっていった。
学びを楽しむうちに雪だるまの芯ができ、転がって大きくなる感じだ。

投資をはじめて以降の私自身の投資人生を振り返ってみても、
なるほど外山さんの語る

「儲けようと考えない投資」

というのは投資で人生を豊かにするための真理なのではないか。
伝わりづらい話だろうけど、語り継いでいけたらいいなと思う。

堅実な投資は愛国的な行為

また株式投資の社会的意義についてこんな表現をしており、

「個人が銀行にお金を預け、銀行が企業に融資するという『間接投資』ではなく、一人ひとりが投資先を選んで企業の株を買う『直接投資』が増えれば、日本経済の先行きについての問題意識は、間違いなく高まる。国家としての未来を真剣に考える人が増えるということだ。つまり、堅実な株投資は『愛国的な行為』なのである。」

日本に投資が文化として根付いていないために、
将来有望な日本の企業が海外の企業に買収されることを嘆いていた。

資本主義の世界である以上、投資に無関心な国民ばかりでは食い物にされる。
だから一人一人が株式投資と向き合うことが国の産業を守ることにつながる。
これはあの松下幸之助が1967年に訴えていたことの繰り返しとも言えるが…。

海外の模倣からの編集が得意芸の日本が投資を受け付けない不思議。
歴史を振り返ると、日本が中国から模倣しなかったものといえば、

科挙、宦官、族外婚、一夫多妻、姓、冊封、天命、纏足が思い当たる。
日本人にとって投資とは、この手のものと同じ扱いということなのか…

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