なぜ中央銀行の独立性が脅かされるのか?
それは民主主義の正規のプロセス外にある「非多数派機関」ゆえに、
ポピュリストにとって仮想敵の要件を備えた格好の存在となってしまうから。
という見解が、森田長太郎「経済学はどのように世界を歪めたのか」に示されていた。
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非多数派機関の憂鬱/森田長太郎「経済学はどのように世界を歪めたのか」(20/03/08)
そんな経済ポピュリズムに抵抗していた日銀総裁と言えば、
金融緩和に対して消極的だと非難された、前総裁の白川方明氏。
そんな白川氏が総裁退任後の2018年に出版した「中央銀行」を読んでみた。
白川氏は総裁在任中、国内の経済状況をどう認識していたのか?
とくに「デフレ」に対する考え方を中心に編集してみた。
コロナがいったん落ち着き、経済活動が再開すると、またデフレが話題になるだろうから。
日銀に対する批判の議論を整理
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日本経済の問題の根源的な要因は物価の継続的な下落、すなわち、デフレにある。
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デフレは「貨幣的現象」である。それ以外の要因、たとえば、輸入物価の下落、規制緩和や流通業の競争激化による販売価格下落等はいずれも相対価格の変動にすぎない。
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行き過ぎた円高は日本銀行の消極的な金融緩和政策によって引き起こされている。国内製造業の空洞化をもたらしている大きな原因は、この行き過ぎた円高である。
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日本銀行は大胆な金融緩和政策を実行しなければならない。これを実行すれば、日本経済は「失われた10年」と呼ばれるような状態から脱却できる。
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日本銀行が大胆な金融緩和政策に踏み切るためには、ただちにインフレーション・ターゲティングを採用しなければならない。具体的には、2%の目標物価上昇率を設定し、期限を区切って、この目標を約束しなければならない。
デフレに対する認識
デフレスパイラルではない
90年代半ば以降、企業は名目賃金水準を引き下げ、雇用の確保を優先。
緩やかな物価下落と低い失業率はコインの裏表であり、
物価下落予想による支出の繰り延べによってデフレが起きていたわけではない。
そして予測物価上昇率が何によって決まるのかは判然とせず、
中央銀行の目標物価上昇率につられて動くものとは考えられない。
デフレは貨幣的現象ではない
日銀の貨幣の供給(マネタリーベース)が少ないことがデフレの原因ではない。
マネタリーベースと物価との間に相関関係はない。
しかしマネタリーベース増加のために日銀が国債の買い入れを行い、
それが金融政策が国家財政の状況によって制約されてしまう状況、
いわゆるフィスカル・ドミナンス(財政従属)とみなされれば、
激しいインフレが起きる可能性はあり、それを警戒していた。
日本の真の課題はデフレではない
日本が直面している真の課題は物価の下落ではなく、
急速な高齢化と日本企業の競争力低下を背景とした潜在成長率の低下にある。
先進各国の2000~2010年GDP成長率を比較したとき、
- 実質GDP、1人当たり実質GDPともにG7諸国で最も低いグループ
- 生産年齢人口1人当たり実質GDP成長率はドイツと並んで最も高い
一人一人の労働者が奮闘しても、生産年齢人口の減少が痛かったことが分かる。
また企業の競争力低下のスパイラルが起きており、
- 賃金水準を下げて雇用を確保することは技能の温存というメリットがある一方、不採算事業の温存というデメリットにつながる
- 不採算事業は価格競争力がないため、賃金・価格が低下する
- 長期の予想物価上昇率が低下していく
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