人間の移動が病気を拡散する/石弘之「感染症の世界史」

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この機会にウイルスや感染症について学ぼうと思ったが、
関連図書は図書館では貸出待ちで、Amazonでも在庫切れ。
外出自粛ならば読書、という人が意外と多いようだ。
こういうときに電子書籍は便利。

Kindle版で石弘之感染症の世界史を半分ほど読み進めたが興味深い。
2014年に出版され、2018年に文庫化された一冊だが古さは感じられず、
出版社のウェブサイトには掲載されたばかりの、著者のインタビュー記事もある。

まず序章で来るべき時が来たのだなと感じさせられるのが、

「感染症の世界的な流行は、これまで30~40年ぐらいの周期で発生してきた。だが、1968年の「香港かぜ」以来40年以上も大流行は起きていない。」

つまり一生に1,2回はパンデミックに遭遇してしまうものなのだ。

そして環境破壊により新たな感染症は次々と生まれていく。

「新興感染症の七五%は動物に起源があり、森林破壊によって本来の生息地を追われた動物たちが人里に押し出されて病原体を拡散させるようになった。」

いつまでも「新型」コロナウイルスと連呼するのはやめた方がよい。
これからも次々と「新型」が現れるだろうから。

また人がより速く、より遠くに移動することで病気は拡散されやすくなった。

「「移動手段」が、徒歩、馬、帆船、汽船、鉄道、自動車、飛行機へと発達するのにつれて、これまでにない速度と規模で人と物が移動できるようになり、SARSや西ナイル熱のようにそれに便乗した病原体も短時間で遠距離を運ばれる。しかも、人類は都市で密集して暮らすようになり、感染する側には絶好の条件が整った。」

失われた動物の生活環境をすぐに元に戻すのは難しい。
だが海外出張のような人の移動に関してはVR技術で何とかならないか?

またとくに日本の場合、満員電車で通勤の慣習は改めるべきだ。
今回、テレワークに対応が遅れた会社から優秀な人材が流出し、
自然と衰退していくことを期待したいが、時間がかかりそうだな…。

本書ではシルクロードの交易の時代から(西からは天然痘やハシカ、東からはペスト)、
1999年にニューヨークで流行したアフリカの風土病だった「西ナイル熱」まで、
古今東西の人の移動に起因する感染症拡散の歴史を知ることができる。

人の移動を抑制しながらも、経済活動を停滞させないためには何が必要か?
今後の一大テーマになっていくことだろう。

感染症の世界史 (角川ソフィア文庫)
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