正義が愚行に変わるとき/ポール・A・オフィット「禍いの科学」

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COVID-19以前に直近で経験した大きな危機といえば、
2008年からはじまる金融危機と、2011年の東日本大震災。
そしてこの2つには共通点がある。

当初は持ち家の夢にあと一歩届かない庶民の夢を叶える!
そんな目的だったはずのサブプライムローンは、
金融リターンのみが重視され、節度を失い、善から悪へ転落。

グリーンエネルギーの旗手とされてきた原子力発電が、
押し寄せる津波により一夜にして善から悪へと転落。

現代の主な脅威は、あからさまな悪意を持ったものではなく、
善意ではじまったものが、何かの拍子で猛威をふるうことにある。
という認識を持っていたが、そんなことは前々から頻発しているよ、
と教えてくれた一冊が、

  • ポール・A・オフィット禍いの科学

人類に破滅的な禍いをもたらした7つの発明を紹介している。

  • アヘン…シュメール人は「喜びをもたらす植物」と名付けたが、これが人類の薬物中毒のはじまりだった。
  • マーガリン…当初はバターより健康と喧伝されたが、トランス脂肪酸の脅威を見落としていた。
  • 化学肥料…人工窒素の発明は食糧問題を解決したが、ジワジワと自然を汚染。また化学兵器に転用された。
  • 優生学…時代の風潮に科学が迎合し、それに文化的・政治的な偏見が絡まる悪夢。
  • ロボトミー手術…わずか5分で精神病を治す手術はノーベル賞を受賞したが。。。
  • 沈黙の春…ベストセラー「沈黙の春」の影響で殺虫剤DDTが禁止されたが、その結果、多くの子供の命が失われた。
  • 抗酸化…人口の抗酸化物質を摂取し長生きに!とノーベル賞受賞者が旗振り役となったが、がんと心臓病のリスクを高めただけ。

時代の風潮(健康志向やベストセラー)や権威(ノーベル賞受賞者)により、
善だと思い込んで突き進み、短期ではたしかに利益が得られたかもしれないが、
長期的な損失や未来への影響の大きさを把握できないものを生み出していた。

教訓となるような過去の事例は多くとも、私たちには知性の限界があるように感じられ、
善から悪への転落という事例は、おそらくこれからも繰り返されていくのだろう。

禍いの科学 正義が愚行に変わるとき
日経ナショナル ジオグラフィック
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