二度と訪れることはない高度成長という奇跡/マルク・レヴィンソン「例外時代」

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みすず書房が翻訳出版する経済書がおもしろいことに気が付いた。

最近再読したピケティ21世紀の資本に続いて手に取った、
シュトレーク時間かせぎの資本主義が共にみすず書房の出版だった。

ほかにもおもしろそうな本ないかな?と調べて読んだのが、

マルク・レヴィンソン例外時代 高度成長はいかに特殊であったのか

「時間かせぎの資本主義」とセットで読むのがちょうど良い内容だった。

原題は下記で2016年に出版され、日本語訳は2017年。

“An Extraordinary Time: The End of the Postwar Boom and the Return of the Ordinary Economy”

この本の出発点であり結論は、
末尾に示されたポール・サミュエルソンの言葉に集約されている。

「20世紀の第三四半期は、経済発展の黄金時代だった。この時代は、あらゆる合理的な期待を上回っていた。そして、同じような時代が近いうちに再び訪れることは、まずないだろう。」

著者は第二次大戦後の経済を石油危機の1973年以前と以後に分けて、
高度経済成長期の1973年以前が、例外的な時代であったことを解き明かす。

1973年までは労働生産性が驚異的に上昇し、それに伴い生活水準も向上。
また政府は社会保障制度を充実させる財源を築くことができた。

しかし1974年以降は労働生産性の向上速度が急減速する。
先進12カ国の労働生産性(労働者が1時間で生み出す成果)の成長率は、

  • 1959~1973年…年平均4.6%
  • 1974年以後…年平均2.0%

またアメリカにかぎっては生産性に関する完全なデータが揃っており、
その全要素生産性(労働生産性、資本生産性、技術発展を分析する測定方法)は、

  • 1960~73年…+34%
  • 1973~86年…+7%

そしてかつての高度経済成長を夢見た政治家たちが、
生産性の伸び率以上に経済を成長させようと政治的な介入をした結果…

「1990年代には日本の一般家庭の家計が資産価格バブルによって壊滅状態になった。1980年から1994年の間にはアメリカで何千もの銀行が破綻した。2008年に欧米で始まった深刻な景気低迷は返済能力がない借り手への過剰な融資が原因で起こったものだったが、痛いほど高い失業率をもたらし、欧州連合そのものの存続までがおびやかされた。どれもこれも、生産性の伸び率が可能にするよりも早く経済を成長させようとした政治的介入に端を発している。」

ゆえに経済成長が軸ではない新たな文明の構想が必要なのである。

例外時代
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