出版から3年も手に取らなかったことを後悔させられる一冊。
エマニュエル・トッド「我々はどこから来て、今どこにいるのか?」
人類史といえば、ユヴァル・ノア・ハラリが注目されている。
だが世界の読み解くための視野を広げてくれるという点で、
トッドの著作の方が段違いに素晴らしいと思う。
それでもハラリのように世界的なベストセラーになれないのは、
トッドの主張の根幹である「個人と家族構造の歴史観」が、
欧米諸国に受け入れづらい内容だからだろう。
トッドは従来正しいと思われてきた
- 時間の経過とともに、大家族・共同体家族から、核家族へ移行していく
- 個人が開放されて自由を手に入れ、また女性の地位も向上していく
という歴史観がまったく反対だったことを解き明かしている。
つまり家族構造は「核家族→直系家族→共同体家族」と進化しており、
その過程で男性の権力が強まり、女性の地位が低下していったのだと。
ただ経済成長という観点でいうと、太古の家族構造が残る英米が有利だった。
直系家族→共同体家族と父系制レベルが高くなるほど社会は硬直化しやすいから。
核家族は地理的・社会的移動が多く、いわゆる創造的破壊が起きやすいのだ。
経済的な観点だけで遅れている国を未開とみなし、啓蒙しようとしても、
うまくいかずに対立する根源は家族構造にあるのでは?と指摘している。
たとえば、自由主義や民主主義を広めようとする欧米諸国と、
共同体や国家の安定を重視する中国やロシアとの対立は、
単なる政治・経済体制な衝突ではないということ。
- 核家族社会…欧米諸国
- 共同体家族社会…中国・ロシア
たしかにこの前読んだ、2022年のプーチン演説においても、
個々の社会の伝統、文化、歴史的経験から生まれる価値観を尊重すべき!
と欧米による価値観の押し付けに反発する一節があった。
また家族構造と経済構造の一致にも言及しており、
- 生産よりも消費する国=貿易赤字の国…個人主義的で、核家族社会で、女性の地位が比較的高い
- 消費よりも生産する国=貿易黒字の国…権威主義的で、直系家族または共同体家族で、より父系的で、女性の地位が比較的低い
これは自分の中の常識を揺さぶってくれる名著だ。






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