ロマン派詩人、ノヴァーリス(1772-1801)作の未完の小説。
ヨーロッパから広がったロマン主義について詳しくは知らない。
でも「ロマン」という言葉のイメージにピッタリの「青い花」。
「月がおだやかな光をはなって丘の上空にかかり、生きとし生けるものの心に奇妙な夢を思い描かせた。まるで自分も太陽のみる夢のように、この沈み込んだ夢の世界を見下ろし、無数の境界に分かれた自然を、あのおとぎ話の太古の時代へつれもどしたのだ。」P121
日本の「月」に絞って編集したため紹介しなかったけど、
ノヴァーリスの「月が太陽の夢」って感覚が好き。
そして光の描き方もまた美しい。
「夜が光に触れ、光が夜に触れてこなごなに飛び散ると、いっそう微妙な影と色彩があたりにただよう。」P31
さらにはこの世界の教訓までも。
「自然というものは、だれかひとりに独占されることを好まず、いったんひとりの所有に帰したかに見えると、たちまち毒物と化してしまいます。」P108
「人間の歴史を十分に認識する感覚は、年をとってようやく身につくもので、目の前でくりひろげられるものの生々しい印象からよりも、むしろ思い出の穏やかな働きから生まれてくるものです。」P131
「愛とは、人間という謎にみちた独特の存在が、ふしぎに融け合っていくことなのだね。」P194
ノヴァーリスが執筆中に若くして亡くなってしまったため、
結局、何の小説かよく分からなくてモヤモヤだけど、
翻訳が良かったようで美文にたくさん出会える一冊だ。
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